カーター大統領への追悼 その光と影
Japan In-depth / 2025年1月8日 13時27分
古森義久(ジャーナリスト/麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・アメリカの元大統領ジミー・カーター氏、12月30日に死去。1月9日に国葬が行われる。
・カーター政権は対外、国内両面において失態をし「史上最悪の大統領」と呼ばれた。
・一方で、誠実な態度であったカーター氏は、その後元大統領として活躍し、「最高の元大統領」とも称された。
アメリカの第39代大統領のジミー・カーター氏が12月30日に死去した。その国葬が1月9日に執り行われる。歴代大統領で最も長寿だったカーター氏は100歳だった。私の長年のワシントン報道でもカーター氏は個人的には最も親しみを感じた大統領だった。アメリカという国の寛容さや、アメリカ政治の魅力を強く実感させてくれた政治指導者でもあった。
だがその反面、カーター氏の大統領職務の執行には欠陥が多かった。内政も外交も失態と呼ばざるを得ない軌跡を残した。私自身、直接接したカーター氏の誠実きわまる挙措から受けた個人レベルでの好印象があまりに強かったために、大統領としての彼の負の部分を伝えることには強いためらいを覚える。とくに死者についてそのマイナス面を語ることは不公正という言葉さえ連想させる。しかし歴史上の人物の客観的な評価は欠かせないだろう。
私がカーター氏に対して初めて報道の対象として向きあったのは1976年秋だった。アメリカ大統領選たけなわのその時期、カーター氏は民主党の新人候補として選挙戦を戦っていた。相手は共和党の現職ジェラルド・フォード大統領だった。私自身は毎日新聞のワシントン駐在特派員としてのスタートを切ったばかりだった。
南部ジョージア州の知事を一期、務めたというだけの政治歴のカーター氏は国政レベルでは無名に近い新人だった。だがその前年のべトナム戦争での大挫折で沈鬱した当時のアメリカでは反ワシントン、反エスタブリッシュメントを体現したようなリベラル派の新星カーター氏が人気を集めていた。
カーター氏は海軍士官学校出身、アメリカ海軍の潜水艦の軍務という経歴こそあったが、その後は故郷のジョージア州でピーナツ栽培の農業やキリスト教会の牧師となっていた。そして同州の知事選に出て当選を果たした。政治的には民主党本流ともいえるリベラル派だった。そして1976年の大統領選ではフォード大統領を破った。フォード氏の前任のリチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件の醜聞で辞任に追い込まれたことも共和党保守派への不信を広めていた。
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