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団塊の世代の物語(12)

Japan In-depth / 2025年1月15日 23時0分

「とにかく、その丹呉氏がコーポレートガバナンスが日本経済を復活させるにはコーポレートガバナンスしかない、とおっしゃっているってわけだ。」


「あら、じゃ丹呉さん、私たちの同志ってことね。」


英子が無邪気に言い放った。目尻に皺が寄る。年齢を感じさせる。皺の少ない顔だが、笑ったときには驚くほどの皺ができるのだ。とくに目と頬の間に皺がたくさんできる。


体質なのだろう。


「そうか、そういうことになるな。


僕も大木先生にその話を聞いたときには、日本のエスタブリッシュメント中のエスタブリッシュメントがそこまで考え詰めているのか、って、いささかの感慨があったよ」


丹呉3原則の三つ目が外国の力を借りることも必要なら躊躇するな、っていうんだろ。驚くよね。


彼をしてそこまでの思いに至らしめたのは、なによりも失われた30年の間、日本国内への設備投資が少なかったことに原因がある。だから日本人の職場が増えない、だから日本人の給料が上がらない、だから日本人は子どもをつくらない。日本企業は海外への投資を増やして来たのだし、それはそれで企業という立場からは当然のことなんだろうけど、でも日本という国の視点からはどうなのかな。


国は国民が大事。金よりも国民、というか、金は国民のために使ってなんぼだ。


海外に生産拠点を作って利益をあげている日本企業って、いったいなんだい?
 英子が微笑をもらす。


「私に言われても」


「そうだね。


なにが悪かったといって、例外は別として、社長の後継者選びだ。縮小均衡しか能のない社長選び連続。


滝野川が好い例だ。


僕を社長に就けたのは遠山社長だ。その遠山社長を社長にしたのは丸山会長だ。ま、越前谷社長を飛び越えての会長による指名だから、実力会長だったってことかな。僕を育ててくれた川野副社長の話、したよね。」


「ええ。京都に住んでいた女性に恋した学生さん」


「日本の上場企業の社長選び、オーナーのいる会社、事実上同族経営の会社を除くと、どこを見ても複雑骨折なんだな。人事っていうのは運、縁、依怙贔屓っていった人がいたけど、そんなところだよ。選ばれなかった方から見れば、なんとも不当な依怙贔屓だ。でも、選んだほうに言わせれば、運と縁の結果で信頼できる人が分かる、それこそが依怙贔屓の大事なところ、ってわけだ。


「遠山さんて方、なんだか心理的に負い目があって、前評判をくつがえしてあなたを社長にしたっていう話。なんだか変。」


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