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団塊の世代の物語(12)

Japan In-depth / 2025年1月15日 23時0分

「僕はクライスラービルを買う前からできるだけ早く売るつもりでいた。でも、丸山社長がご存命の間はできないとわかっていた。社長を辞めたところで会長になる。会長の次は相談役だ。そして特別顧問、名誉顧問という順だ。権力はすこしずつ減りながらも、残り続ける。というよりも、社長が人選をして次の社長を選ぶのさ。権力は、実はぼんやりと少しずつ年月が経つに従って、本人たちの意志にかかわらず偏移してゆくんだ。その間に会長が死んでしまうこともある。もちろん特別顧問やその前の人はもっと死んでしまう可能性が高い。日本の会社ってそんなものさ。社業が順調な限りは、だけどね。


つまづいたら、ダメ。業績の悪化はもちろんだけど、不祥事も同じことになる。これまではトップのセクハラが連続しいて起きていた巨大企業があったけれど、これもこれからは社外取締役が責任を問われることになってくる。実のところ、社内の人間にしてみると社外の方々は取締役かもしれないけれど、しょせんお客様っていうのが本音なんだな。


でも、そんな発想もいつまで持つのかどうか。怪しくなってきているな。わかるよ。僕らがやろうとしていることも、その一環だものね。丹呉3原則、その2つ目が『コーポレートガバナンスしかない』だものね。


あなたも知っているだろうけど、丹呉泰健さんという方は大木弁護士の大学時代以来の友人なんだ。でもただの弁護士の大木先生と違って、日本のエスタブリッシュメント中のエスタブリッシュメントと呼ばれるにふさわしい方だよ。開成高校から東大の法学部に合格してさらに大蔵省に入ったからっていうようなことだけじゃない。そうした人間は年に何十人といる。丹呉氏は小泉純一郎内閣で事務方の筆頭秘書を長く務め、さらに財務次官となった方なんだよ。これまでの日本のどの基準で測ってもエスタブリッシュメント中のエスタブリッシュメントと称するのになんの躊躇もない。


「大木先生はエスタブリッシュメントじゃないの?」


「違うね。本人もよく分かっている。弁護士なんてエスタブリッシュメントに決してなることはない。」


「どうして?」


「だってそうだろう。この世は組織が力なんだよ。だから、組織で階段を最後まで昇った人がエスタブリッシュメントになる。」


「ふーん。そういえば、弁護士さんて事務所としては決して大きな組織じゃないものね。」


「最大の弁護士事務所で700人くらいかな。


売り上げはいくらか公表されてないけれど、どう考えても1000億にはならないだろう。


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