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重要・新興技術の輸出管理の多国間連携を提唱、米シンクタンク(米国、日本)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月7日 15時10分

米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は3月5日、重要・新興技術の輸出管理体制を議論するパネルディスカッションを開催した。

CSIS国際ビジネス担当アソシエイトフェローのティボー・デナミエル氏は、ホワイトハウスが2月12日に更新した重要・新興技術18分野の中でも、米国の安全保障上の理由から特に輸出管理強化の対象となっている(1)量子技術、(2)半導体、(3)バイオ技術、(4)人工知能(AI)、(5)通信・ネットワーク技術、(6)無人機の6分野に焦点をあて、それぞれのサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を指摘した。例えば半導体分野では、微細な部品上に複雑な設計を施す電子設計自動化(EDA)ソフトウエア、設計を実装する製造装置、アセンブリー・テスト・パッケージング(ATP)などが、欧州、米国、日本、韓国、中国、台湾などの特定企業に依存しているとして、そのサプライチェーンにチョークポイントがある、と指摘した。こうした複数国・地域にまたがるサプライチェーンに対して、米国が一方的に輸出管理を講じることは現実的でないとして、多国間で輸出管理を連携することの重要性を説いた。具体的には、これら重要・新興技術にどのように関わっていくかという基本的なガイドラインを多国間で策定するというガバナンス面での連携、生産能力拡大面での連携、そして、多国間が参加しつつも中心的な複数の国が具体的措置の合意形成を図るようなハイブリッドな枠組みでの連携を講じるべきだ、と提言した。

また、デナミエル氏は、米国が半導体製造装置の輸出管理で日本やオランダと連携していると指摘しつつ、分野や参加国を絞った中での意思決定は合理的だが、より総体的なアプローチを取る話し合いにつながるような輸出管理の枠組みも必要となると述べた。さらに、米国政府も新たな輸出管理体制の必要性を認識しているとした上で、既存の多国間枠組みとは別の枠組みを策定する時期にあるとの課題意識を示した。

CSIS貿易・技術プロジェクトディレクターのエミリー・ベンソン氏も、輸出管理の多国間連携の必要性に賛同しつつ、通常兵器および関連汎用品に関する輸出管理の国際レジームであるワッセーナー・アレンジメントでは加盟国のロシアが発言権を有し、輸出管理対象品目リストへの重要・新興技術の追加が困難な制度的なまひ状態だ、と指摘した。その上で、「より大きくなるか、立ち去るかの二者択一だ」と述べ、G7を発展させて輸出管理や、経済的威圧への対抗、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化に関する制度を設けつつ、韓国とオーストラリアを加えるなど参加国の拡大を図るべきだと主張した。またベンソン氏は、2023年のG7広島サミットで議長国の日本から経済安全保障分野の連携についてアジェンダが示されたことを評価し(2023年5月23日記事参照)、デナミエル氏も、2024年のG7議長国のイタリアがこの勢いに続くことに期待したいと述べた。

CSISは、今回パネルディスカッションに先立って、多国間輸出管理に関する報告書を2023年11月2日11月8日2024年2月14日にそれぞれ発表している。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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