トヨタ、米国の水素本部をロサンゼルスに設置(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月9日 2時10分
トヨタ自動車の北米統括会社トヨタ・モーター・ノース・アメリカ(TMNA、本社:テキサス州プレイノ)は5月1日、北米の水素事業本部を設置したと発表した。同社は水素関連の研究開発、事業化の企画・営業拠点を米国西海岸最大の港湾のロサンゼルス港とロングビーチ港の近郊のガーデナ市に構えていたが、その拠点の名称を新たに水素本部(H2HQ)へと変更したもの。
H2HQは北米での水素事業への取り組みを推進し、小型・大型燃料電池設備、定置型燃料電池発電、港湾内の作業車両で使用する設備などを含むグローバルな水素関連技術開発と、製品のローカライゼーションを行う。また、将来的に事業で重要となる、柔軟に電力の使用が調整できるマイクログリッドや、顧客に向けた持続可能な教育を行うための施設などを追加する予定としている。
同社は既に燃料電池自動車(FCEV)の「MIRAI」を全米で販売しており、水素技術を他の用途にも活用する試みを行ってきた。今後は乗用車だけでなく、大型トラックや、港湾で使用する車両、定置式燃料電池発電など、多岐にわたる分野で水素の取り組みを先導することとなる。
特にトラック分野では、米国のトラックメーカーのパッカーと協業しており、パッカー傘下のケンワース・トラック・カンパニー(本社:ワシントン州シアトル)と、ロサンゼルス港などで燃料電池トラックの実証実験を行っている(2022年9月26日記事参照)。トヨタはケンタッキー州のトヨタ工場で製造した燃料電池スタック(注1)をパッカーに提供することで合意しているほか、ケンワースのT680トラックに燃料電池駆動部品の電気ドライブトレインを提供するという事業提携を結んでいる。
また、TMNAは5月2日に、ロングビーチ港で燃料電池発電事業を手がけるフューエル・セル・エナジーと提携して運営する施設「Tri-gen(トライジェン)」(注2)のグランドオープニングを行った。当施設で発電した電力は、年間約20万台のトヨタ製の新車とレクサス車両を扱う北米最大の車両保管施設とされる、ロングビーチ港湾内に所在するトヨタロジスティクスサービス(TLS)の車両の運行や、配送センターの運営で使用される。
(注1)最小の発電単位の「セル」を複数枚積み重ねたもので、発電装置の働きを担う。
(注2)2.3メガワット(MW)の発電が可能な燃料電池発電所と水素ステーションを併設している。畜産場の家畜排せつ物や余剰食品などの廃棄物系バイオマスから水素を取り出し、燃料電池を用いて発電することで、再生可能エネルギーから水素、電気、水の3つの物質を生成する(2023年9月15日記事参照)。
(サチエ・ヴァメーレン)
(米国)
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