「猫なんか」の声に負けない 地域猫を地道に世話する人々の情熱に迫る
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年4月5日 5時0分
野良猫との共存を目指し、ボランティアの市民が「地域猫活動」に取り組んでいる。不幸にも命を落とす野良猫を救い、住民生活の環境保全にも寄与する活動現場を取材した。
◆まちに桜を咲かせるように
野良猫を捕獲して不妊去勢手術を施し、野良猫の頭数抑制につなげる地域猫活動。市民が生活時間を削りながら献身的に取り組み、成果も上がっている。
下田理絵さん(51)=仮名、川崎市高津区=は、ボランティアメンバーから野良猫を引き取ったことがきっかけで約5年前に活動に加わった。関わった野良猫は昨年だけで約120匹に上る。
自宅で愛猫5匹を飼い、さらに捕獲した野良猫8匹を一時的に預かって面倒を見ている。「過酷な環境で命を落とす猫も多いので、守ってあげたい。地域猫が減れば喜ぶ住民もいる」と下田さん。高校生の子どもを育てながら活動にも情熱を注ぐ。
大平華加さん(45)=同区=は、野良猫の里親を探していた友人に協力したことがきっかけで、約3年前に活動を始めた。これまで野良猫約30匹と関わった。「長続きするように無理なくやっている」と言い、仕事と両立する。
不妊去勢手術を施した野良猫は、獣医師が耳先にV字形の切り込みを入れることがある。ボランティアメンバーらが一目で分かるようにするためだ。切れ込みが入った耳が桜の花びらに似ているため、「さくら耳」と呼ばれている。そうしたことから下田さんは「地域に桜を咲かせる活動」と言う。
◆殺処分件数も減少
川崎市は、地域猫活動が広まったことで市内の野良猫の頭数は減ったとみている。頭数把握に関する調査をしていないが、市内の猫の路上死体数が2015年の2392匹から22年は1133匹に半減したことなどが根拠という。
それに伴い、殺処分件数も減っている。以前は、保護された生後間もない子猫などは健康であっても殺処分されていた。現在はやむを得ない理由がある場合に限られ、1985年の5835件をピークに減少し、2014年からは毎年10件前後で推移している。
現場で効果を実感する下田さんと大平さん。「不幸な子どもだってたくさんいるんだから、猫なんかの面倒は見なくていい」といった周囲の声を耳にするが、啓発活動にも取り組み、少しずつ理解の輪を広げている。
下田さんは「人を助ける人がいれば、動物を助ける人もいていい。外の猫を限りなくゼロに近づけ、安全に暮らせる猫を増やしたい」と意欲的に話す。大平さんは「地域全体で猫の面倒を見るようになってほしい」と願っている。
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