【昭和を検証】柏崎刈羽原発を推進した田中角栄邸が余りにも原発と近いワケ
TABLO / 2014年6月11日 16時0分

田中角栄の実家は新潟県に今も存在する。田園風景が広がるのどかな場所だ。角栄が現役だった頃は一日五千人(隣の親戚の話)は訪れたそうだからさぞ華やかだったのだろう。しかし今は訪れる人はなく、母屋に人けはなく、ひっそりしている。
この場所から柏崎刈羽原発は目と鼻の先だ。角栄邸から原発の正門までは約7.5キロ、車で10分あまりで行けてしまう。一番近い5号機の建屋までは直線で約5キロしか離れていない。福島第一原発のような事故が起これば、風向き次第ではまったく住めなくなる距離だ。
http://n-knuckles.com/discover/img/0524.jpg▲原発は住宅地のすぐそばにある。
やけに近いのには理由がある。どうも角栄が原発の誘致を自分の出世に利用したフシがみられるのだ。
1966年に田中角栄のファミリー企業「室町産業」がのちに原発となる土地を買収している。ここは日本海沿いに広がる広大な砂丘地帯であった。そしてその3年後の69年、東京電力から建設計画が発表、すると71年、土地は東電に転売され、角栄は5億円あまりという巨額な利益を得る。角栄はその資金を翌72年、自民党総裁選の選挙資金に利用、首相になった――。
この話のソースは『赤旗』(2001年1月15日号に掲載された元新潟県刈羽郡越山会(田中角栄後援会)会長・木村博保氏の証言である。これが本当だとすれば、角栄は自らの郷里の土地を転がして得たお金を資金源に、首相まで上り詰めたと言うことになる。
むろん彼は私利私欲だけで動いたわけではない。アメリカからのエネルギー依存脱却、公害の根絶、そして郷里である新潟の繁栄も計算に入れていた。
角栄は『日本列島改造論』で次のように語っている。
「原子力発電所の放射能問題については海外の実例や安全審議委員会の審査結果にもとづいて危険がないことを住民が理解し、納得してもらう努力をしなければならない。しかし、公害をなくすというだけでは消極的である。
地域社会の福祉に貢献し、地域住民から喜んで受入れられるような福祉型発電所づくりを考えなければならない。たとえば、温排水を逆に利用して地域の集中冷暖房に使ったり、農作物や草花の温室栽培、または養殖漁業に役立てる。豪雪地帯では道路につもった雪をとかすのに活用する。
さらに発電所をつくる場合は、住民も利用できる道路や港、集会所などを整備する。地域社会の所得の機械をふやすために発電所と工業団地をセットにして立地するなどの方法もあろう」
首相になった角栄は1974年、電源三法を成立させる。
これは実質的には原発の立地を容易にするための法案といえた。発電所を誘致すれば、それまでも入っていた固定資産税のほかに、多額の交付金が入り込む。多額の交付金というアメにより、地方の原発建設を促そうとしたのだ。
電源三法の成立は柏崎刈羽原発の誘致に始まった角栄の目論見をさらに強化するものであったのかもしれない。この法律を有効活用させるため、地元を使って毒味役というか実験台を買って出たということではないだろうか。角栄の自宅裏庭のような場所に原発を作り稼働させるというモデルが成功させることで、全国に原発を作る足がかりにしようと考えていたとしてもおかしくはない。
http://n-knuckles.com/discover/img/999.jpg▲角栄邸から原発正門までのルート
地元に富をもたらした角栄のプランは成功する。柏崎刈羽原発の交付金は地元に莫大なお金をもたらした。そのため地元、新潟において彼は圧倒的な支持を受け続けた。1976年にロッキードで逮捕されても、1986年の最後の選挙までトップ当選を続けた。
全国的に見ても角栄の目論見は成功したといえる。電源三法が成立した74年当時、8基しか稼働していなかった原発は3.11発生時には54基にまで増えた。
ところが彼の目論見はあくまで「安全神話」に基づいたものでしかなかった。2007年には中越沖地震が発生し、柏崎刈羽原子力発電所は爆発・メルトダウン寸前の事態に陥った。もし福島のような事態になっていれば福島県の大熊町のように角栄邸の一帯は住めなくなっていた可能性が高い。
http://n-knuckles.com/discover/img/0122.jpg▲2007年の中越沖地震では田中家の墓場も被災した
『日本列島改造論』の言葉通り、おそらく角栄は原発が安全だと信じ切っていたのだろう。町に人が住めなくなるかもとすこしでも疑いを持っていたら、故郷の発展を心から望み続けた角栄が原発を誘致するはずがない。
3.11以後、原発は止まった。原発を誘致した自治体は交付金を充てにできず、いまや虫の息である。現状を考えると、角栄の決断は罪深いし浅はかだったともいえる。
Written Photo by 西牟田靖
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