使ってませんか? 車用バッテリー「電源」使用はNG 本来の目的以外の危険性とは
くるまのニュース / 2020年5月28日 16時10分
クルマのエンジン始動用のバッテリーは、誤った使い方をすると有毒ガスが発生する危険性があります。誤った使い方とはどのようなことなのでしょうか。
■自動車用バッテリーを本来の目的以外で使わない
2020年5月26日朝、新潟県の高速道路上で工事関連の作業員2名が車内で意識不明の状態で発見され、その後、病院で死亡が確認されました。
報道によると、パソコンや回転灯を使うための電源として、車内にはクルマの始動用バッテリーが積まれていたとのことです。一体何が起こったのでしょうか。
一般社団法人 電池工業会では、「自動車用バッテリーの正しい使い方」として、最初に『使用用途に適したバッテリーを使用する』と記しています。
自動車用バッテリーは、クルマのエンジン始動用以外に使用すると正常に作動せず、液漏れ・引火爆発の原因になったり有害ガスが発生する恐れがあります。
一般的にバッテリーと呼ばれているものは、エンジン始動用の鉛バッテリーのことで、通常はエンジンルームに配置されています。(欧州車など一部の車種はトランクやシート下などに配置されている場合もあります)
エンジンルームではなく、トランクや車内で鉛バッテリー単体をパソコンや家電製品の電源として使用することは、本来の目的から外れた使い方ということになります。
そして、エンジン始動用以外に使用すると、有害ガスが発生する恐れがあります。この有害ガスとはどのようなものでしょうか。
電池工業会に聞いてみたところ、「有害ガスには硫化水素も含まれる」との回答を得ました。
硫化水素は一定濃度以上で人体に重大な影響を引き起こす物質です。350ppmから400ppmの濃度(1時間曝露)で生命に危険を及ぼすとされています。
自動車用バッテリーは身近な存在だといえますが、このような恐ろしい物質はどのような条件下で発生するのでしょうか。
クルマの電装品を扱うメーカーのエンジニアに、バッテリーから硫化水素が発生し、命に係わる事態になるにはどのような条件となるのかを聞いてみました。
「3つの悪条件が重なったことによって硫化水素が発生し、車内が危険な状態になったと考えられます。
硫化水素の発生源となる鉛バッテリーを所定の場所、目的以外で使用した。
(密閉された車中など)換気の悪い場所に置いて使用した。
バッテリーのメンテナンスを怠ったため電解液が減り、発生する硫化水素の濃度が上昇した。
最大の原因は、やはり漫然と鉛バッテリーを電化製品の電源として使うためにクルマに積んだことだと思います」
■電解液が減少している古いバッテリーを外部電源で充電すると危険性大
別メーカーの専門家は以下のように警告しています。
「鉛電池は自動車のバッテリーとして長い間、広く使われていますが、特殊な条件が揃うと非常に恐ろしい硫化水素が発生することがありえます。
バッテリーのチェック
例えば、古くなった始動用の鉛蓄電池(自動車用バッテリー)で、電解液が減少している場合、外部電源などを使って過充電したときなどに起こり得るようです」
古くなった鉛蓄電池で、電解液が減少しているときに外部電源などを使って過充電とはどのような状態を指すのでしょうか。
バッテリーを自分で交換したことがある人ならご存知だと思いますが、バッテリーは重い部品です。
軽自動車やコンパクトカーで使われる40B19というサイズのバッテリーでも、約10kgもあります。この重たいバッテリーのなかは、電解液として希硫酸が満たされています。
バッテリーはクルマに積まれているとき、ヘッドライトやカーオーディオなどさまざまな電装品に電気を供給すると同時に、エンジンの回転によって発電する発電機(オルタネータ)によって充電されています。
ほぼ完全な充電状態に近づくと、電解液中の水の分子が電気分解されて酸素ガスと水素ガスになり放出されます。つまり、電解液のなかの水分だけが減ってくる状態となります。
完全にシールドされた密閉型のバッテリーでは水を補充する必要はありませんが、開放型のバッテリーは液減りした分の水分を補う必要が出てきます。なお補充する場合、水道水は絶対にNGで精製水を使用します。
そして、このような「水分が少なくなって、希硫酸の濃度が高くなった状態」のバッテリーを、エンジンルームで始動用として使うのではなく、一般の電化製品などの充電のためにバッテリー単体で使用していると、非常に危険な状態になりかねないようです。
例えばトランクルームやクルマの床などに劣化した古いバッテリーを置いて、減った水分の補充もなく、ソーラーパネルなどの外部電源などで過充電状態にするとどうなるのでしょうか
「もともと水分が減って濃度が濃くなった希硫酸が過充電により沸騰すると、経年劣化でわずかなすき間ができた筐体(バッテリー)から漏れた希硫酸が水素と結合して、硫化水素が生成されます。
そこが車内など密閉された空間である場合、乗員の生命に危険が及ぶことも大いに考えられます」(電気メーカーのエンジニア)
「車内でパソコンや回転灯などの装備品の電源として使うなら、最近いろいろな種類が出てきた大容量のモバイルバッテリーを使うのはありかと思います。
ただ、リチウムイオン電池なので(高温になると危険な)車内では充電せず、あくまで家で充電したものを持ち込むことが基本です。
また、降りるときも車内に放置せず、その都度外して持ち帰るようにしましょう」(クルマの電装品を扱うメーカーのエンジニア)
※ ※ ※
自動車用バッテリーは所定の場所から移動させて外部電源などで充電しながら電源として使うことは大変危険です。
キャンピングカーのサブバッテリーとして、自動車用バッテリーを改造した自作品を使用しているケースもあるようですが、電池工業会は、自動車用バッテリーを違う用途に使うことやバッテリーを改造することを固く禁じています。
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