トヨタ以外もバブル期は熱中していたのに 国産メーカーがモータースポーツから離れていく訳
くるまのニュース / 2021年2月12日 7時10分
2021年2月8日の東京株式市場で、日経平均株価が30年半ぶりとなる2万9000円台を突破しました。バブル最盛期だった1990年の平均株価を超える水準ですが、当時の自動車業界を振り返ると、国産メーカー各社がモータースポーツに積極的だったのに対し、2021年現在ではモータースポーツから距離を置くメーカーが多い状況です。当時と現在で何が変化したのでしょうか。
■モータースポーツ活動から距離をとる国産メーカーが増加
日経平均株価が2万9000円を超え、3万円の背中も見え始めた。新型コロナ禍による景気低迷のなか、バブル最盛期だった1990年の平均株価を超えたのだから驚く。
当時と今の自動車業界を見ると大きな違いがあります。1990年に発行された自動車専門誌を手に取れば一目瞭然。鋭い人はすぐ解ると思うけれど、その違いはモータースポーツです。
例えばF1。当時ホンダは第2期の全盛期! セナが6勝してシリーズチャンピオンを奪取し、ヤマハとスバルも12気筒のF1エンジンを作って参戦中(ヤマハは1990年だけお休み)。それだけじゃなく、いすゞまでF1エンジンを作ろうとしていた。
なぜそれほどF1人気かといえば、容易にスポンサーが付いたからに他ならない。当時、エプソンやキヤノン、東芝、日本信販、不動産投資で莫大な利益を上げていたレイトンハウス等々、日本企業はこぞってF1のスポンサーになった。
当時私(国沢光宏)も海外のF1取材に行ったけれど、日本の大手企業の視察多数。大半のチームに日本企業のステッカーがあったほど。そのままバブル景気が続いていたら、F1を席巻するイキオイだった。
WRCを見るとF1以上に日本のメーカーが参戦しており賑やかでしたね!
全盛期を迎える直前のトヨタは「セリカ」で名門ランチアとガチ勝負中! マツダも4WDの「ファミリア」でフル参戦。
三菱は「ギャランVR-4」。スバルも「レガシィ」で本格的なWRC活動を始めていた。そうそう、日産「パルサーGTI-R」が参戦を目指してテストを繰り返していた年です。
1990年の自動車雑誌をもっとも賑わせていたのがル・マン。
当時強かった7リッターのジャガー「XJR-12」とポルシェ「962」に対し日産は3.5リッターV型8気筒ターボの「R90CP」を4台投入。予選で1000馬力以上といわれるパワーを出して見事ポールポジションを取った。
トヨタも3.2リッターV型8気筒ターボの「90C-V」を3台。マツダが4ローターの「767」をエントリーしている。
なにより驚くのはTOPカテゴリーのグループC/GTPに、日本のチームが12も出ていること! 自動車メディアだけでなく一般紙までこぞってル・マンを取り上げ、当時私も毎年ル・マンの取材に行ってました。
パドックは日本人ばっかり。ル・マン市街のレストランに行くと、どこでも日本のレース関係者ばっかりだったことを思い出す。
長い説明になった。文頭に戻る。1990年以来の平均株価ながら、直近の自動車メーカーを見るとモータースポーツ予算をまったく取らなくなっている。
なぜか? おそらく経営している人達がモータースポーツに興味を持っていないし、明確な費用対効果を評価出来ないためだと思う。
確かにモータースポーツと販売台数を結びつけることは難しい。けれどファッションの一流ブランドは華やかなショーでデザインを競い、セレブに愛用してもらうのが唯一のブランド作りの手段であるように、自動車もモータースポーツで性能の高さを披露する以外にないと思う。
それをよく理解しているのがトヨタ(正確には社長)。実際、日本の自動車メーカーではひとり勝ちという状況になっています。
確かに新型コロナ禍で財政状況が良くないという側面もあると思うけれど、世界的な景気で考えたら悪くなかった2019年時点で見ても、日本の自動車メーカーはモータースポーツと距離を置いていた。
明るいニュースが皆無に近い三菱自動車や、良いクルマを作っていても“華”がないマツダあたりは、小額の予算でいいからモータースポーツに戻ってきたらいいと思う。
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