いさぎよく何かを犠牲にした? 性能や見た目にこだわった車3選
くるまのニュース / 2021年4月2日 16時10分
一般的に軽自動車ならば安価でなるべく広い室内、コンパクトカーならば燃費などの経済性と使い勝手の良さ、スポーツカーならば走行性能と実用性バランスさせて開発されています。しかし、ある性能や見た目に特化したモデルも存在。そこで、何かを犠牲にしてまで性能やデザインにこだわったクルマを3車種ピックアップして紹介します。
■ある性能や見た目を重視したクルマたち
実用性が重視されるミニバンや軽ハイトワゴンなどは、広い室内で燃費も良く比較的安価というニーズがあります。
また、趣味性がそれほど高くない高性能モデルでは、速いだけでなく実用性も考慮していないと売れない時代です。
近年は、各自動車メーカーともある性能に特化したモデルをつくるのではなく、さまざまな要素を高度にバランスさせる必要があるといえます。
一方で、かつては性能や見た目を重視して、その他の部分を犠牲にしたようなモデルが存在。そこで、性能やデザインにこだわったクルマを3車種ピックアップして紹介します。
●ホンダ初代「インサイト」
低燃費をストイックなまでに追求した初代「インサイト」
1997年にトヨタは量産車で世界初となるハイブリッド車の「プリウス」を発売。現在のハイブリッド車の普及状況からすると、まさに世界が一変するほどのインパクトがあったクルマといえます。
この初代プリウスに対抗するべく、ホンダは1999年に世界最高水準の低燃費を目指したハイブリッド専用車「インサイト」を発売しました。
新開発のパワーユニットは70馬力を発揮する1リッター直列3気筒エンジンに、13馬力のアシスト用モーターを組み合わせたパラレルハイブリッドの「ホンダIMA(インテグレーテッド・モーターアシスト)システム」です。
そして、シャシは「NSX」で実績を積んだアルミ製モノコックを採用し、ボディパネルの多くはアルミと樹脂を組み合わせるなど、かなりの高コストとなっていました。
さらに室内は実用性を切り捨て2名乗車とすることでリアシートを省き、大胆な軽量化をおこなった結果、モーターと走行用バッテリーを搭載していながら車重は820kg(5速MT)と超軽量です。
外観では空気抵抗を削減するためにスポーツカーのようなウェッジシェイプとし、リアタイヤをスパッツで覆うなどによって、Cd値(空気抵抗係数)は当時としては驚異的な0.25を達成しました。
その結果、燃費性能は目標どおりプリウスを抜き、量産車で世界最高となる35km/L(10・15モード)を記録。
しかし、初代プリウスが5名乗車のセダンだったのに対し、インサイトは2名乗車というユーザーが限定されてしまうレイアウトを採用したことが災いして、ヒット作にはなりませんでした。
その後、プリウスが再び燃費王座を奪還し、2003年に登場した2代目プリウスではEV走行も可能とするなど、インサイトはもはや太刀打ちできない状況となり、2006年に生産を終了。
なお、初代インサイトの価格はプリウスを意識して210万円(消費税含まず)からに設定されており、おそらくプリウス以上に赤字覚悟だったと想像できます。
●三菱「ジープ」
悪路走破性のみを追求して快適性は二の次だった「ジープ」
米軍の軍用車として開発され、1956年には民生用として発売された三菱「ジープ」は、その生い立ちどおり悪路走破性に特化したクルマです。
ジープのボディタイプはショート、ミドル、ロングが設定され、幌タイプやバンタイプがあり、縦格子のフロントグリルに丸形2灯ヘッドライトの特徴的なフロントフェイスはシリーズ共通とされました。
シャシはトラックと同様に頑丈なラダーフレームでボディを架装するレイアウトを採用。
足まわりはストロークを長くとった前後板バネのリジッドアクスルとすることによって、高い耐久性を誇りつつ悪路での優れた路面追従性を発揮しました。
搭載されたエンジンは直列4気筒のガソリンとディーゼルが設定され、歴代モデルではさまざまな排気量が用意されるなど、使用状況によって選択が可能でした。
また、装備は必要最低限のものだけで快適装備というとヒーターとラジオくらいです。
当然、パワーステアリングも設定されておらず、乗り心地や高速性能も考慮されていないため、普段使いにはまったく適していませんでした。
1990年代の終わりに、排出ガス規制や衝突安全基準の強化への対応が困難なことから生産終了が決定され、1998年に専用のボディカラー、専用幌生地、シャシの防錆強化が図られた「最終生産記念車」を発売し、三菱ジープは長い歴史に幕を閉じました。
なお、ジープを興味本位で買うユーザーもいたようですが、あまりにもシビアなドライブフィールに耐えられず、すぐに売ってしまうケースが多かったといいます。
■室内の広さよりもデザインを優先した軽自動車とは?
●スバル「R1」
居住性よりもデザインを優先した軽自動車の「R1」
日本独自の規格として長い歴史がある軽自動車ですが、1979年に発売されたスズキ初代「アルト」が47万円という驚異的な低価格を実現したことで、普及がさらに加速しました。
当時、商用車には物品税が課せられなかったことから安価な価格に設定できるとして、アルトは後席のスペースを犠牲にした商用バンとして開発され、以降は軽ボンネットバンが主流となります。
しかし、1989年に物品税が廃止され、軽自動車税も見直されたことから軽ボンネットバンから乗用車が再び主流となって、現在に至ります。
そして、軽ハイトワゴン、トールワゴンの登場で軽自動車は広い室内を競うようになりましたが、2005年にデビューしたスバル「R1」はそんな流れに逆らったモデルでした。
R1のボディは軽セダンのR2をベースにした3ドアハッチバッククーペで、後席スペースは緊急用としてしか使えない2+2に設定。
あくまでも前席2名乗車をメインに設計された、スペシャリティカーを目指していたのです。
スタイリングはかなりユニークで画期的な造形と高く評価され、フロントビューも全体のイメージを壊すことなく個性とアイデンティティを主張するなど、新しい軽自動車のカテゴリーとされていました。
また、内装のデザインはR2に準じていましたがビビッドなカラーコーディネートも設定されるなど、独自の世界観が取り入れられています。
エンジンは最高出力54馬力を発揮する660cc直列4気筒自然吸気を搭載し、さらに追って64馬力の直列4気筒DOHCスーパーチャージャーをラインナップ。トランスミッションは全車CVTのみです。
足まわりは4輪独立懸架を採用するなど、走りの質にもこだわっていました。
しかし、軽スペシャリティカーというコンセプトはユーザーには響かず、R1は2010年に一代限りでR2とともに生産を終了。
すでに背の高い軽自動車が主流となっており、R1のコンセプトが優れていたとしてもニーズはありませんでした。
※ ※ ※
極端な例ですが、かつてイタリアのスーパーカーは速く走ることに特化していたことから、快適性や経済性などがまったく考慮されておらず、操縦できるのは限られた人だけでした。
しかし、現代のスーパーカーは驚異的な速さだけでなく、乗り心地や燃費も重視した設計となっており、イージードライブも可能で運転するだけなら誰でもできます。
時代の流れから当然の進化といえますが、近年、古いクルマが人気となっているのは、気難しい面を懐かしむ人が多いからなのかもしれません。
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