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国内最高峰で戦い続けるTOM’S なぜ強豪でいられるのか? 舵を取る谷本社長に聞いた!

くるまのニュース / 2021年4月28日 18時40分

国内最高峰のモータースポーツといわれる「スーパーGT」。2021年シーズンは岡山からスタートしたが、今回はそのなかでも強豪チームといわれるTOM'Sが手掛ける36号車の「TGR TEAM au TOM'S」とTOM'Sを率いる谷本勲社長にこれまでと今後の展望を伺ってみました。

■スーパーGTの競合チーム「TOM'S」を変えた!? さらなる高みを目指す人物とは

 2020年とは異なり、スケジュール通りの開催となった2021年の「スーパーGT」。

 日本でもっとも人気の高いモータースポーツカテゴリーといわれています。通常であれば、結果を取り上げるだけでなく、そこに関わる「ヒト」に注目していきます。

 なかでも、注目したいのが日本のレース界の名門中の名門チームである「TOM’S(トムス)」、それもエースナンバー「36」の「TGR TEAM au TOM’S」です。

 このチームを選んだのは理由があります。それは数多いレーシングチームのなかで、「モータースポーツ」と「市販車」がリンクしている点です。

 トムスについて少し説明しておくと、1974年の創立以来「世界で活躍できるレーシングチーム」を目標に、トヨタ車を用いてさまざまなモータースポーツ活動をおこなっています。

 カテゴリーは、スポーツプロトタイプからフォーミュラ、ツーリングカーまで多岐に渡りそのほとんどで成功を収めています。

 その一方で、トムスは「ナンバーワン・トヨタチューナー」という顔も持っています。

 モータースポーツ活動で培った技術と経験を活かしたカスタマイズパーツはクルマ好きから高く支持され、その実力はトヨタも認めるほどです。

 実は、純正パーツと同じように全国のトヨタディーラーで購入可能という信頼も持っています。

 最近は、パーツ販売のみならずコンプリートカーも精力的に開発しており、その1台である「TOM’S SUPRA」や「TOM’S CENTURY」は大きな話題となりました。

 そんななかで、2つの顔を持つトムスの強みを社長の谷本勲氏に聞いてみました。

 谷本氏はトムスが2018年に株式会社モブキャストホールディングの連結子会社となった際に社長に就任。それから3年間でさまざまな改革をおこなってきたといいます。

――トムスにとってモータースポーツは創業以来のメイン活動ですが、谷本社長はどのように捉えていますか。

 モータースポーツ活動は「ブランド作り」だと思っています。それを実現させるためのポイントは2つあり、1つは「強くある事」、もう1つは我々に欠けていた部分ですが「ファンに優しくある事」だと考えています。

――創業から40年以上、トムスのブランド力はかなり高いと思っていますが?

 それも事実ですが、自分が3年前に社長になった際に思ったのは、ブランドイメージと実際の事業規模が不釣り合いだと感じました。

 実は、日産のニスモと同じくらいだと思っていましたが、実際に見ると「思ったより小さいな(笑)」と。

 持っているブランド力を考えると、ユーザーへのアプローチはまだまだ足りていないと思いました。

――ユーザーへのアプローチ、具体的にはどのようなモノでしょうか?

 古くからカスタマイズ事業はおこなっていますが、ここ最近は消費者の動向が変化していると考えています。

 以前は「機能」だったと思いますが、最近はブランドを立たせた「パッケージ」です。例えばメルセデス・ベンツに対するAMGのようなイメージです。

――つまり、パーツ単品だけでなくコンプリートカー販売ということですか?

 そうです。以前から「パーツをフル装着するとコンプリートカー相当になる」という想いで開発していましたが、やはり車両1台のほうが自分たちの主張も表現もしやすいと思っています。

 我々は「全国のトヨタディーラーで取り扱い」という強みがありますが、ユーザーは「単品よりもパッケージのほうが買いやすい」という話も聞いています。

――ここまでは何となく想定内(!?)な感じですが、それ以外に取り組んでいることは?

 トムスはコアなユーザーから高く評価される一方で、とくに若いユーザーから「敷居が高い」という声も聞きます。

 そういう意味では、メジャー/身近な方向に舵を切っています。ただ、振れ幅を間違えてしまうと逆にブランド価値を下げてしまう恐れもあるので、振り幅は慎重に進めています。

――トムスの目指すビジョンの1つは「ファンに優しくあること」とありますが、トムスは比較的年齢の高い層が多いように感じます。若い世代に向けたアプローチは?

 その辺りに関しては自動車用品だけにこだわっていません。例えば、アパレルや時計などの展開も進めています。

 それもサーキットでの応援用ではなく普段の生活で着られるようなアイテムです。

 例えばメルセデス・ベンツはHUGO BOSSと組んでいますが、そのようなイメージですね。

 理想はトムスを知らない人が「これいいよね!!」と身に付けていただき、調べてみたらレーシングチームだったといってもらえることです。ブランドがあるのでシナジーは生みやすいと思っています。

――つまりクルマをキッカケに、ライフスタイルも構築しようと考えているわけですね?

 実はベンチマークは「レッドブル」です。彼らが自前でレーシングチームを持ち、さまざまなスポーツ支援をおこなうのは、本業(飲料事業)のブランド活動のためです。

 我々は逆にモータースポーツが創業事業ですので、それを活かしながらそこから抜けるためのブランド展開を目指します。

■トムスが意識する「強くあること」の真意とは?

――では、もう一つの「強くあること」に関してですが、新たな取り組みなどは?

 モータースポーツ活動で伸び代があるのは「データ分析」だと考えています。

 F1などはスーパーハイテクな印象があると思いますが、日本ではそこまでではないのが現状です。そのため、従来よりもデータエンジニアの採用や育成を行なうなど、力を入れています。

――データ分析が進むと、どのようなことが可能になるのでしょうか?

 レース前に予選/決勝共に想定セットを持ち込み、実際に走らせて調整していきますが、精度の高いデータを使うことができれば強みになります。

 例えば、ドライバーがいうアンダーステアの原因をフィーリングだけでなくデータで解析できると短時間で解決が可能となりますよね。

 実はその積み重ねが重要で、その結果常にトップ争いが可能となり、トータルで年間チャンピオンを争えるチームになれると考えています。

 ドライバーはこれまでの実績から速いドライバーが集まるので、ここ3年で力を入れている部分です。

TOM'Sを率いる谷本社長。これまで、そしてこれからのビジョンとは?TOM'Sを率いる谷本社長。これまで、そしてこれからのビジョンとは?

――データという意味では、36号車のメインスポンサー「au」は2016年からタッグを組んでいますが、彼らとのコラボなどは?

 レースの魅力を伝えるには現状のメディアだけでは足りないと考えています。

 そこでauの5Gを使った放映の形、車載動画の見せ方など、エンターテイメントの分野でテストマーケティングをおこなっています。

――何か取り組んでいることは?

 例えばメインカメラ以外に各コーナーにいる観戦者がインターネットに5Gを介して映像を上げることでカメラワークは無限大になります。

 その映像をAIを使って画像分析すれば常に36号車が映るような映像の提供も可能となります。現在、技術的な検証を進めているところです。

――つまり、auとは単純なスポンサーの関係ではないわけですね?

 その通りです。ほかのスポーツは最新の技術を駆使して色々な情報を出してエンターテイメントコンテンツ化しているのに、日本のモータースポーツは昔と変わらないのは勿体ない。レースは面白いので、その伝え方ももっと変えていきたいなと。

――ちなみに先日提携発表をおこなった「デロイト・トーマツ」とはどのようなことを?

 デロイト・トーマツとは「データ解析」の部分でタッグを組んでいます。彼らはアナリティクスチームを持っているので、レース人材の育成やマシンセッティング、次期マシン開発に活用していくことになります。

――ちなみにトムスはレース業界で正社員比率が高いと聞きますが、結束力やチーム力はもちろんですが、データの“蓄積”という部分でも強みだと思いますが?

 メンバーが変わらないのは強みですが、その一方で同時に悪い面も滞留します。ただ、うちは世代交代が上手く進んでいて若手も多いです。

 ドライバーだけでなく、メカニックもエンジニアも勝ちたいと思って所属しているので、「強くあること」は大事です。

――色々とお話しをお伺いしてきましたが、「今までのトムスと違うぞ」という部分が見えたような気がします。

 社内では「伝統と革新」といっていますが、やはり本業であるレースで勝たなければダメです。優勝は時の運もありますが、常に勝てる位置にいることが重要です。

※ ※ ※

 そんな36号車は岡山県の岡山国際サーキットで行われた2021年スーパーGT開幕戦「2021 AUTOBACS SUPER GT Round1 たかのこのホテル OKAYAMA GT 300km RACE」は、予選3位/決勝2位という結果でした。

 しかし、関口選手は「予選で前からスタートできていたら展開は違っていたと思う。次戦では絶対ポールポジションを狙って、優勝したい」。

 坪井選手は「周囲から良いレースをしたといわれたが、勝てるレースで勝てなかったのは本当に残念で悔しい」とドライバーの二人はコメント。

 また、舘信秀チーム総監督のも「ペース的にはウチのほうが速かった。ドライバーとチームの頑張りは評価したいが、勝てるレースを勝てなかったことが残念でならない」厳しいコメント。

 つまり、速かったのは36号車でしたが、強かったのは優勝した14号車だったわけです。

 ただ、「2位でも悔しい」と思う気持ちこそが、強いチームである証だと感じました。

 次戦は5月3日-4日に富士スピードウェイでおこなわれる「2021 AUTOBACS SUPER GT Round2 たかのこのホテル FUJI GT 500km RACE」ですが、その目標は……いうまでもないでしょう。

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