マツダの高度運転支援技術「CO-PILOT」は他社システムと何が違う? 2022年登場の新型車に搭載!
くるまのニュース / 2021年11月4日 11時30分
マツダは、高度運転支援技術「CO-PILOT」を2022年に市販車へ搭載する予定です。このCO-PILOTは、他社の運転支援システムとは大きく異なるといいますが、一体どのようなシステムなのでしょうか。
■マツダが導入を予定する「CO-PILOT」って一体ナニ?
マツダは2022年からラージ商品群に「CO-PILOT 1.0」という新技術を搭載する予定です。
それに先立ち、新技術「CO-PILOT CONCEPT(コ・パイロット コンセプト)」を、広島県三次市のマツダ三次自動車試験場で体感しました。
ラージ商品群とは、日本では直列6気筒ガソリンや直列6気筒ディーゼルと48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたモデルや、また直列4気筒プラグインハイブリッド車など新規SKYACTIVを搭載する、新型「マツダ6」や新導入の「CX-60」や「CX-80」のことです。
CO-PILOTとは飛行機の副操縦士を指し、マツダとしてはドライバーをいつも見守ってくれているパートナーという意味を込めています。
なお、今回の技術試作車として、マツダがスモール商品群と呼ぶFFベースの「マツダ3 ファストバック SKYACITV-D」を使用しました。
さらに、2022年導入仕様に加えて、2025年導入予定の進化系CO-PILOTについても合わせて実体験することができました。
試乗体験は、高速周回路で高速道路での体験、またワインディング路で一般道路での体験を再現しました。
たとえば、ワインディング路を時速60kmで走行中に運転席で体調が悪くなり、ドライバーがぐったりと倒れこんだという状況を想定。
約3秒後に、「ドライバー異常のため、安全なところまで自動で走行し停車します」というアナウンスが車内に流れ、ダッシュボードやインパネに専用のアラートを表示。車外ではクラクションが鳴り出し、ハザードライトとブレーキライトが点滅します。
一般道路では約60秒間自動で走行し、地図情報をもとにできるだけ安全な場所の路肩に停車します。これは、交差点内での停止を避けるための考え方です。
なお、日本の交差点は最長でも150m前後のため、それを基準として走行時間を設定したといいます。
停止後はクルマのシステムが自動的にヘルプネットに通報し、救急・消防や警察の出動を要請します。
2022年量産予定のCO-PILOT 1.0では同一車線での停止および路肩への停車をおこない、2025年量産予定の進化系では非常停車帯での退避を想定しています。
体調急変だけではなく、強い眠気に襲われたときにも何度かの注意喚起をした後に、ドライバー異常をクルマのシステムが判断して、「ドライバー異常時対応システム」が作動します。
また、助手席や後席などの乗員がドライバーの体調異常を感じて、このまま運転することが不可能だと判断した場合、天井にあるボタンを操作して「ドライバー異常時対応システム」を作動させることが可能です。
一般道路と同様に高速道路でも「ドライバー異常時対応システム」は作動しますが、走行速度は高速道路など自動車専用道での最低速度である時速50kmを維持して走行。システム作動時間は、非常停車帯の設置間隔を考慮して約3分間としています。
2022年導入のCO-PILOT 1.0では、第1車線では路肩退避、そのほかの車線では同一車線での緊急停止となり、また2025年導入予定の進化系CO-PILOTでは今回体験したように、2車線や3車線の高速道路を走行している場合は、第1車線まで自動で車線変更します。
この場合、隣の車線に接近車両があると、その動きも検知したうえで車線変更の判断をおこないます。
■ドライバーの異常を“予知”する機能とは?
このマツダのCO-PILOT CONCEPTは高度運転支援システムと呼ばれるシステムですが、よく使われる自動運転レベルという考え方とは「別モノである」というのが、マツダの理念(コンセプト)です。
今回の試乗体験に同乗した開発エンジニアは、「CO-PILOT CONCEPTは、ABS(アンチロックブレーキ)のようなクルマの安全走行の基本的装備であり、自動運転レベルという解釈ではレベルゼロだと考えています」と表現しました。
ドライバーの異常事態に作動する「CO-PILOT」とは
そういわれて、他社の高度運転支援システムとの違いを考えてみました。
ホンダが2021年3月に世界で初めて量産した自動運転レベル3の「ホンダセンシングエリート」や、トヨタ・レクサスの「アドバンスドドライブ」では、システム稼働中にドライバーがステアリングをしっかり握らなかったり、視線が定まらないと高速道路では自動減速して路肩に寄って止まります。
スバルの「アイサイトX」でも同一車線で停止する様子を、国が所管する自動車テストコースで体験していますが、どれも高速道路など自動車専用道を走行中に、GPSの受信状態や周囲の状況など“一定条件が整った場合”のみシステムが作動します。
一方、マツダのCO-PILOT CONCEPTは、高速道路だけではなく、一般道路でも作動しますし、またACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)の作動の有無にも直接関係していません。
2022年導入のCO-PILOT1.0では、すでに導入している車内カメラをハードウエアとして継承し、ソフトウエアをアップデートすることで、ドライバーの姿勢から居眠りや体調急変による姿勢の崩れ、閉眼や運転行動を検知し、またステアリングのトルクセンサーからステアリング無操作を検知します。
姿勢崩れでは、たとえば痙攣が起きるとステアリングを手前に強くひきつけて、姿勢がえびぞりになることを検知してドライバー異常を判定。
そして2025年導入の進化系では、合計12個のカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーなどを搭載し高度三次元地図との連携も深めます。
このほか、2025年に導入するのは、ドライバー異常の予兆を検知する技術です。
これまでのドライバー異常検知のプロセスは、車両のふらつきを統計的に判定すること、またドライバーの眼の動きや顔の向きから眠気や脇見を検知することでした。
これらに加えて、脳機能などについても判定をするというのです。
マツダが広島大学と共同開発している分野で、てんかん、脳血管疾患、心疾患、低血糖、神経調節性失神などから大脳の機能低下が起こると、視線の“特定の個所への偏り”などが生じることが分かってきたといいます。そうして視線挙動から、ドライバー異常予兆を検知するというわけです。
「マツダは自動運転技術で、ほかのメーカーに比べて出遅れているのではないか」と考える人がいたら、それは正しい理解ではないと思います。
なぜならば、そもそもマツダは、自動運転に対する考え方がほかのメーカーとは違うのですから。
マツダといえば、「ロードスター」を筆頭に、「Be a driver」や「人馬一体」というクルマづくりに対する独自性が色濃いメーカーです。
安全技術についても「『人』が中心の安全技術で、ドライバー自らの意思で運転し自由に移動する『走る歓び』をサポートする」という、企業としての理念を貫いています。
そのうえで、「CO-PILOTが見守ることにより、ドライバーから走る歓びを奪わない安心・安全を目指す」と主張しています。
そうしたマツダの思いを証明するような体感を今回でじっくり味わうことができました。2022年登場の量産モデルの出来栄えに期待したいと思います。
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