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ある意味「ガチンコ」勝負!? トヨタ&スバルは似た者同士? BRZが菅生で魅せた「速さ」とは

くるまのニュース / 2022年7月21日 12時10分

2022年7月9日、10日に、「第3戦 SUGOスーパー耐久3時間レース」が開催されました。ORC ROOKIE Racingの28号車「ORC ROOKIE GR86 CNF Concept」が欠場するなか、Team SDA Engineeringの61号車「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」はどのような走りを見せたのでしょうか。

■GR86は「前向きな欠場」という選択…SUBARU BRZは「速さ」を追求!

 波乱の連続だった富士24時間耐久レースから約1か月、今回はスポーツランド菅生でおこなわれる3時間耐久です。

 時間は短いもののテクニカルなコースのため油断はできません。

 今回はクラスがふたつ(Gr.1/Gr.2)に分けられ、3時間×2のレースとなっています。

 マシンは富士からどのような進化を遂げたのでしょうか。

 まずはTeam SDA Engineeringの本井雅人監督に話を聞きます。

「富士ではトランスミッションに課題がありました。

 実はレース直後にトヨタさんとうち、そしてアイシンさんと集まり、破損したトランスミッションをバラして検証しました。

 弊社(三鷹)でやったのですが、今までじゃありえないことです。

 勝ち負けも大事ですが、次に向けて『皆で何とかしなければ!!』という想いが強くなっている証拠です」

 61号車のSUBARU BRZ、パッと見ると富士のときと大きな違いはありませんが中身はかなり手が入っています。

 富士から投入されたダクト付きボンネットは、菅生からカーボン製へ変更することで軽量化しているほか、懸念のトランスミッションはGR開発の強化品を導入(ギア比などはスバル専用)。

 さらにミッションに優しいエンジン制御(アップシフト:アクセル全開シフトがOK/ダウンシフト:ブリッピング機能付)も重箱の隅を突くようなアップデートがおこなわれています。

 パワートレインは吸気系レイアウトを一新することで、何と+約20psの出力アップを実現。

 1.4リッターとはいえターボエンジン搭載のGR86との出力差を埋める決定打のひとつだそうです。

 富士のときには内緒だった、カーボンニュートラル燃料を綺麗に燃焼させるための制御や専用のエンジンオイルも投入されています。

ライバルのGR86が欠場のなかで…速さを磨く「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」ライバルのGR86が欠場のなかで…速さを磨く「Team SDA Engineering BRZ CNF Concept」

 フットワークはどうでしょうか。

 実は今回、一番変わった部分で、セッティングの考え方を大きく見直したといいます。

「我々の走りの考え方は、量産車もレーシングカーも変わらず『誰が乗っても、乗りやすくて速い』です。

 ここまで量産の延長線上でいいところまで来たと思っていますが、スリックタイヤを使うレーシングカーとして求める性能という意味では、弱い所があったのも事実です。

 そこで今回(菅生)とオートポリス(次回)は、一度徹底して『速さ』に振ってみようと。

 車高/キャンバーなどは、その方向でセットアップをおこなっています。

 一歩一歩着実……も大事ですが、一度、我々の常識の外を経験してみようと。そんな挑戦をしています」(本井監督)

 要するにトランスミッション以外の部分の信頼性は2戦を戦って実証されているため、次のステップに入ったというわけです。

■GR86が「前向きな欠場」を選択したワケは?

 では、ORC ROOKIE Racingはどうでしょうか。

 実は28号車のGR86は参戦をキャンセル。「アジャイル開発にこだわる」「最後の最後までカイゼンの手を止めない」が信条のGRですが、何があったのでしょうか。

 車両の開発責任者であるGR車両開発部の藤原裕也氏が現場に来ていたので、理由を聞いてみました。

「一番は『クルマの完成度』の問題です。

 具体的にはハンドリング、ブレーキ、トランスミッションなどがそうです。

 我々のマシンはノーマルのGR86に対して大きく手を加えています。

 開発車両なので未完成な部分があるのは理解していますが、我々が把握できている所/できていない所があったのも事実です。

 そのため、一度クルマの根本を見直さないと同じ事の繰り返しになってしまうため、いったん立ち止まって考えよう……と。

 つまり、開発をより効率的に早くおこなえるようにするために欠場という判断をしました。

 そんななか、私が現場に来たのは、いつもと違う環境でスバルさんを観るためです。

 いつもは自分たちのことで手一杯ですが、今回はある意味、俯瞰して眺めることができるので、何か気づきが得られたらいいなと思っています」

 いつものガチンコバトルが見られないのは残念ですが、このプロジェクトの本質は「レースの場を活用しながら、将来に向けた先行開発をおこなう」ことにあります。

 問題を解決することなくレースに参戦するのは、開発としては間違っているわけで、GR86は「前向きな欠場」という選択をしたわけです。

 ただ、お互いの話を聞けば聞くほど、「ホント似ているよね」と。

 段階的な進化から一歩抜き出ようと挑戦をおこなうスバル、飛び抜けていたが段階的な進化をおこなうために冷静になったGR、つまり「アプローチは違うけど、目指す所は同じ」というわけです。

「己との闘い」とはいえ、影のライバルはST-4クラスに参戦する86号車(トムススピリット)だったという「己との闘い」とはいえ、影のライバルはST-4クラスに参戦する86号車(トムススピリット)だったという

 今回のスバルは「己との闘い」ですが、影のライバルはST-4クラスに参戦する86号車(トムススピリット)。

 前回の富士では同じエンジンながらも大きく差を付けられていましたが、今回の予選結果はこの通りです。

 ●61号車
 A:井口卓人選手 1分33秒100
 B:山内英輝選手 1分33秒048

 ●86号車
 A:河野駿佑選手 1分34秒094
 B:松井孝允選手 1分33秒247

 本井監督は予選前に「86号車には追い付きたいという思いは強いです」と語っていましたが、追い付くどころか抜きました。

 Aドライバーの井口選手は「まだまだ課題はありますがマシンは大きく進化しており、エンジニアの皆さんの想いは着実にカタチになり始めています。欲をいえば28号車と直接対決をして前に出たかったですね!」と語ってくれました。

 このように今回の61号車は、いつもとはちょっと違います。

 その光景を見ていたGRの藤原氏は「BRZの伸びしろに、正直驚いています! この短期間でここまで速くなるとは予想していませんでした」と驚きを隠しません。

 ただ、1度だけヒヤッとしたシーンがありました。

 実は予選前のフリー走行で、コース上にストップしたのです。

 筆者は「トラブル?」と心配しましたが、そのとき乗っていた廣田光一選手に後で話を聞くと、「ハザードを押すときに誤ってイグニッションスイッチに触れてしまい、エンジンが止まってしまいました」と話してくれました。

 ただ、本井監督は「レースカーはインパネセンターにスイッチ類を集約していますが、その配置の仕方に配慮が足りなかった。すぐに改善します」と、その場で自ら誤操作防止用のカバーを製作。さすがエンジニアです。

誤操作防止用の赤いカバーが本井監督自らの手によってその場で製作された誤操作防止用の赤いカバーが本井監督自らの手によってその場で製作された

 また菅生には、これまでスバルの様々なモデルの開発に関わり、走りにこだわりのあるブランドへと引き上げた辰己英治氏の姿も。氏はSTIに移籍してから、ニュルブルクリンク24時間耐久レースへの参戦などを通し、人材育成と車両開発に携わっています。

 今回のスバルの取り組みについて「これまでクルマつくりは裏側でやっていましたが、表で戦うことが大事だです。特にエンジニアは人並みではダメです、それ以上を目指す必要があります。そういう意味ではモータースポーツを通して今回のような若い人材を育てることは、スバルにとって非常に意義のあることです」と話していました。

■決勝の日曜…SUBARU BRZの走りはいかに…?

 日曜日の決勝、SUBARU BRZが走るGr.2のスタートは、いつもより早い午前8時45分からです。

 レース開始直後にオイルを吹いた車両の影響でFCY(フルコースイエローコーション)が提示されたものの、スタートドライバーの山内選手は影のライバル86号車を引き離しながら走行。

 井口選手に交代後もそのペースは変わらず、86号車を1分以上引き離すことに成功。

 最終ドライバーの廣田選手も86号車を上回るタイムで走り切り、3時間をトラブル&アクシデントなく走り切ります。

 結果は107周を走ってST-Qクラス優勝、総合順位も格上のクラスのマシンに迫る速さを見せつけました。

 レース後、山内選手は次のように語ってくれました。

「マシンの進化はもちろん、みんなの気持ちとやる気が結果にも表れたと思っています。

 速さと乗りやすさのバランスも良い方向に向きはじめていますが、僕的にはまだまだ足りていないので、今回やってきた内容をもう一段階引き上げて、次のオートポリスではガチンコで前に行けるように頑張りたいと思います」

 その表情はいつもよりも満足そうに見えたのは気のせいではないでしょう。

 本井監督に今回の総括をお聞きしました。

「とにかく『嬉しい』のひと言です。初めてドライバーに褒められたかも。

 今回は『飛び抜けてみよう!!』をテーマに若いエンジニアがさまざまな挑戦をしてくれた成果が、狙った以上に出たと思っています。

 予選はレース屋の86号車より前、決勝も終始抑えることができ、何よりも86号車のチームから『何やったの?』と聞かれたことが最高に嬉しいです。

 実は富士のときも随分、会話をして色々なアドバイスもいただいたので、恩返しができたかな……と。

 もちろん、課題がないわけではないので、次に向けてシッカリ準備をすれば、結果はおのずと出ると信じています。とにかく、充実したレースウィークでした」

菅生は「最後の最後までカイゼンの手を止めない」という信条ゆえの欠場となった(画像は富士24時間レース)菅生は「最後の最後までカイゼンの手を止めない」という信条ゆえの欠場となった(画像は富士24時間レース)

 最後にGR藤原氏に聞いてみました。

「内心は『なぜ、我々は走っていないのだろう?』とやきもきする気持ちと、スバルが速くなったことに対して素直に『驚き』と『凄さ』を感じたレースウィークでした。

 我々はお休みして開発を進めているので、オートポリスはぶっちぎりで勝たないと恥ずかしいですよね。

 負けないようにネジを巻いていきたいと思っています」

※ ※ ※

 このように今回のスバルの覚醒で、GRのギアも一段上に入った感じといえます。

 次のオートポリスは再びガチンコ対決になります。

 3戦終了してTeam SDA Engineering 2勝/ORC ROOKIE Racingが1勝ですが、次戦は今まで以上に激しい&いい戦いになりそうです。

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