「便器のふたを閉めて流してください」は衛生的か?
共同通信PRワイヤー / 2024年10月28日 14時0分
図1の密閉ブースはHEPAフィルターを装備した密閉構造で、内部で飛散したウイルスなどが外部に漏れる心配はありません。また、今回、ウイルス飛散の推定実験のために用いた模擬ウイルス試料には、牛感染症(牛呼吸器病症候群)の主要な原因ウイルスとして知られており、安全な取り扱いが可能な生ワクチン株がある牛パラインフルエンザウイルス3型の培養上清液を用いました。したがって、このウイルスはヒトへの感染の心配はありません。さらに、密閉ブース内部に備え付けた殺菌灯によって実験後にはウイルスを完全に不活化しているため、今回の実験におけるヒトや環境に対する安全性は担保されています。
また、図2の便器は、節水タイプのサイホン式の一種である洗浄方式を採用しており、1回の水洗で流れる水量は6 Lです。この値は20年以上前の標準的な便器の約半分です。近年、節水タイプの便器の開発はますます進んでおり、使用水量が大幅に削減されていることに加え、水流方式にも各社の工夫が施されているため、本研究の結果の細部は必ずしも全ての便器に共通するものではないと考えられますが、全体の傾向は多くの便器に適用可能であると考えています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410248718-O4-2cRBx2hz】
図3にはレーザー散乱実験によって撮影された飛沫発生の可視化像を示しました。30秒間の撮影により、各飛沫の軌跡が捉えられています。図3左の写真には直径数マイクロメートルから数百マイクロメートルに至るさまざまな粒径の飛沫発生が全て含まれています。大きな飛沫は放物線を描いて落下していますが、小さな粒径(おおむね10 µm以下)のエアロゾルは浮遊し、気流によって流動していることが可視化されています。図3左の中央やや左上に「ω」のような軌跡が見えますが、これは浮遊したエアロゾルの運動の一例です。このサイズのエアロゾルは、トイレの個室内に数分〜数十分間漂う可能性があります。また、上方に勢いよく飛び出した飛沫の最高到達点は40 cm〜50 cmにも達していることも読み取れます。さらに、焦点を前後に変化させた解析により、便座手前側で大きな粒径の飛沫が多く発生し、便座中央から奥側で粒径10 µm以下のエアロゾルが多く発生していることも明らかとなりました(図3右参照)。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410248718-O5-Tp97XzDL】
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