社説:防衛インフラ 標的のリスクも説明を
京都新聞 / 2024年4月4日 16時5分
公共インフラを軍事利用するリスクの説明が必要ではないか。
政府は、防衛力強化の一環として、有事の自衛隊や海上保安庁による活動に備えて整備する「特定利用空港・港湾」に北海道や沖縄など7道県の16カ所を選んだ。
部隊の展開や訓練などができる拠点を各地に確保するのが目的だ。
戦闘機や輸送機が離発着できるよう滑走路や駐機場を整えたり、護衛艦など大型艦が接岸できるよう港内を掘り下げたりする事業を2024年度から始める。
中国の海洋進出や台湾有事への対応が念頭にある。南西諸島防衛を想定して九州・沖縄が半数近い7カ所に上り、自衛隊部隊の多い北海道の5港、物資補給に活用を見込む四国の4港も選ばれた。
池田豊人香川県知事は、高松港指定は安全保障に資する上「災害時も自衛隊などの活動が円滑に行われるようになる」と期待する。
政府は、平時の利用は「年に数回」と強調。国主導で施設が充実すれば、物流や観光、防災にも活用できると利点をあげる。
それだけでは済むまい。整備の主眼はあくまで防衛体制の強化である。
22年末改定の国家安全保障戦略は、インフラ整備を研究開発、サイバー、国際協力と合わせ防衛力強化を補完する4分野とした。
政府が描く想定では、有事の際、自衛隊は基地から民間の空港、港湾にも戦闘機や艦艇を移動。部隊や物資を輸送し、海保は警備や保護活動などを展開する。
長距離ミサイルなどの配備構想と同様、分散配置することで相手の攻撃による被害を局部化し、継戦能力を高めるという考え方だ。
だが、軍事拠点となる施設は攻撃対象とされる危険をはらむ。日米地位協定を盾に米軍が使用を強行する懸念も根強い。
京都でも戦時中、軍港だった舞鶴や周辺が空襲被害を受けた。
各地の住民らの不安の声に対し、内閣官房サイトのQ&Aは「攻撃目標とみなされる可能性が高まるとはいえない」と否定するが、理由は「攻撃を未然に防ぐ抑止力を高めるもの」と極めて抽象的だ。
沖縄県は、政府の説明が不十分として県管理の施設は同意せず、当初候補12カ所のうち国管理の那覇空港など2カ所にとどまる。福井、熊本、鹿児島各県も候補地に同意していない。
自治体は、政府に平時や有事の利用の必要性とリスクの十分な説明と情報公開を求め、住民の安全を優先した判断が求められる。
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