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『閃光のハサウェイ』の宇宙作戦は『エヴァ』を超えるか? 注目の「空中受領」シーン

マグミクス / 2023年1月29日 17時0分

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■『エヴァQ』と同じ衛星軌道上で、機体の争奪戦

「巨大ロボットものってさあ、ガキ向け番組だけどね。まだ生きてて新作を作れるなら、鬼滅潰す、エヴァつぶす。そのくらいに思わないと80過ぎてテレビアニメの仕事なんてやってられないよ」(2021年4月13日放送の「林修の今でしょ!講座」テレビ朝日系)

 これは、『機動戦士ガンダム』シリーズの原作小説を手がけてきた富野由悠季氏のことばです。

 小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は1989年に出版。30年以上の時を経てこの作品の劇場版アニメを制作した村瀬修功監督は、「打倒エヴァンゲリオン」という富野氏の今の想いを映像に込めたかもしれません。

『閃光のハサウェイ』は、反地球連邦組織・マフティーのリーダーであるハサウェイと、地球連邦軍・ケネス大佐とのスリリングな攻防を描く作品です。物語の後半、ハサウェイは切り札である「Ξ(クスィー)ガンダム」を入手します。もともと、彼は連邦軍に対抗する機体を密かに発注し、月から地球へ届けさせるつもりでした。しかし、到着予定地点の海域に連邦軍が迫っているとの情報をキャッチしたため、ハサウェイは「空中受領」、つまり地球に落ちてくる前に機体を回収しようとするのです。

 実はこの場面、原作から大幅に改変されています。原作では、ハサウェイは高度58kmで機体を回収しました。一方、映画の設定資料集(『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ メカニック&ワールド』双葉社)には「衛星軌道上」と書かれており、作中のディスプレイ画面を見ると高度150kmとなっていました。舞台が空から宇宙へと移ったわけです。

 その結果、アニメで描かれた「空中受領」は、2012 年の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(庵野秀明監督)の一場面を彷彿させるものになりました。『エヴァQ』の冒頭、衛星軌道上で封印されていた初号機を、2号機のアスカが回収する作戦が展開されます。このシーンに登場するロケットの軌道は人工衛星の研究者が考証していて、科学的信憑性の高い描写となっています。かと思えば、ワイヤーを標的に打ち込んで強引に捕獲するという、エヴァらしいハチャメチャなアクションもありました。

 リアルとフィクションを融合させるのがSFアニメの面白いところです。では『閃光のハサウェイ』の宇宙作戦シーンはどうなのか? 以下、3つの注目点を紹介します。

■リアリティある描写のなか、突然の「ムチャぶり」

ハサウェイが作中で空中受領したMSを立体化した、「HGUC 1/144 Ξガンダム」(BANDAI SPIRITS)

 ひとつ目の注目点は、機体を格納する「カーゴ・ピサ」のデザインです。映画では、JAXAの宇宙ステーション補給機「こうのとり」そっくりのカプセルとして描かれました。巨大な円筒形で、後部にエンジンがついています。また、ガスをシュッと噴き出して姿勢を制御する様子も忠実に再現。このカーゴの描写ひとつとっても、作中世界が現実と地続きになっていると感じさせるのがすごいところです。

 ふたつ目は「音」です。ハサウェイの同僚・エメラルダが、モビルスーツ「メッサー」に乗り込んでカーゴを捕まえます。このシーン、なんといっても音がリアル。ヘルメット内にこもる荒い息づかいや、鳴り響くアラート音。観客はあたかもエメラルダになったかのような緊張状態を体験します。

 もちろん、本作はただリアリズムを突き詰めたわけではありません。現実から思いっきり飛躍させたフィクションも描かれます。3つ目の注目点は、大気圏突入時のアクションです。カーゴ内のガンダムに搭乗したハサウェイは、衛星軌道から大気圏へただ落下するのではなく、落下しながら戦うというムチャをやります。

 カーゴは敵の攻撃を受け、軌道の制御がきかなくなります。ほぼ垂直に降下していきなり分厚い大気を突っ切ってしまいますが、これはきわめて危険な状態なのです。カーゴが月から来たのであれば時速約4万kmで大気圏に突入しているはずで、本来なら徐々に減速しなければなりません。しかし、ハサウェイのカーゴは大きな空気抵抗で急減速していて、機械やパイロットへ負荷がかかりすぎているのです。

 実は『エヴァQ』のアスカも同じようなピンチに直面し、「降下角度が維持できない! このままじゃ機体が分解する!」と焦っていました。かたやハサウェイは、脳裏によぎったアムロの声に奮起してガンダムをカーゴから発進させます。

「おいおい、そりゃいくらなんでも無謀だ。大丈夫か……?」というツッコミが筆者に思い浮かんだのは、何度も映画を見返してからでした。初見のときは、スピーディな展開で細かいことに気づく余裕は全くなく、ただただ「ハサウェイかっけぇ!」と映像に圧倒されていました。これは、フィクションを支えるリアルの描写が強固だったおかげだと思います。しかも今回紹介した宇宙作戦シーンに限らず、映画の最初から最後まで、徹底的に作り込まれた世界がずっと続くのです。

 そんな驚異的な作品『閃光のハサウェイ』、2月5日の最終回までお見逃しなく。今回「エヴァを超えるか?」と題して記事を執筆しましたが、「どちらもすごい!傑作!」というのが正直な感想。今作は三部作の一作目なので、物語はまだ始まったばかり。続編の公開も楽しみに待ちたいと思います。

(ツヤマユウスケ)

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