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映画『ウルトラマンZOFFY』がシリーズを現在までつなげたといえるワケ 公開から40年

マグミクス / 2024年3月17日 8時10分

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■ウルトラ兄弟の長兄「ゾフィー」の晴れ舞台だった劇場公開作品

 本日3月17日は、1984年に劇場用映画『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』が公開された日です。今年(2024年)で公開から40年になりました。本作は、それまで作品タイトルになったことのないウルトラ兄弟の長兄「ゾフィー」が、進行役となったオムニバス映画です。

 ゾフィーは1966年から翌67年にかけTV放送された『ウルトラマン』の最終回(第39話)に初登場したキャラクターで、後に「ウルトラ兄弟」という、「ウルトラマン」たちをグループ化した際に、その長男として設定されました。このウルトラ兄弟という設定が、1971年に始まる第二期ウルトラシリーズ(『帰ってきたウルトラマン』『A』『タロウ』『レオ』)を盛り上げた要素のひとつだったと言っても過言ではないでしょう。

 ほかのウルトラマンと違って主役の作品を持たないがゆえに、ゾフィー本来の実力は未知数ですが、逆にその存在から「強いに違いない」と思わせるキャラクターでした。それゆえにウルトラシリーズの新作がなかった時期に発表されたコミカライズでは、ゾフィーを主役に据えたマンガが多く発表されています。

 内山まもる先生の『さよならウルトラ兄弟(後にザ・ウルトラマンに改題)』、かたおか徹治先生の『ウルトラ兄弟物語』、居村眞二先生の『ウルトラ兄弟物語 ウルトラ超伝説』(いずれも小学館)などがそうでした。主役でなかったがゆえに実力が未知数で、「最強」と思われたウルトラ戦士、それがゾフィーでした。

 冒頭に挙げた映画では初めてゾフィーをフィーチャーした主題歌も作られ、そのキャラクターにスポットがあたったわけです。しかし、どうして1984年というウルトラシリーズ空白期に、突然、劇場版が製作されることになったのでしょう。それには当時の世相が関係していました。

 1980年代初頭くらいから怪獣や特撮メカニックの無発泡ウレタン樹脂製キット、いわゆる「ガレージキット」が静かなブームとなります。いわゆるメーカーではなく、模型店規模で制作されたこのガレージキットは、従来のメーカーから出た立体物とは一線を画した高いクオリティで人気を得ました。

 この静かなブームにメーカーも目を付け、「REAL HOBBY SERIES」というリアルな怪獣フィギュアが商品化されます。そして、これをより一般的な形としたのが、従来のソフビ人形よりもリアルな造形となった「ウルトラ怪獣シリーズ」という商品でした。

 このウルトラ怪獣シリーズが、ウルトラシリーズの新作がない時期にも関わらず子供たちから好評を得て、ブームのきっかけとなったわけです。この流れからウルトラシリーズの劇場版製作となりました。

 怪獣のソフビ人形はいつの時代も子供には大人気のオモチャです。かつても大きなヒットとなりましたが、このウルトラ怪獣シリーズはそれまでのシリーズと違う点がひとつありました。それは1983年の発売から途切れることなく、現在も販売されているシリーズにつながることです。

 途中でリニューアルもしましたが、今日まで販売を続けているという点では過去の怪獣ソフビとは一線を画していました。そしてウルトラシリーズを商業面から支える、なくてはならない存在となっています。

■現在では意味不明な「過激実況」が効果的だったワケ

いまに続く「ウルトラ怪獣シリーズ」の栄えあるナンバリング「01」。バンダイ「ウルトラ怪獣シリーズ 01 バルタン星人」 (C)円谷プロ

 こういった流れで劇場版が生まれたわけですが、本作がそれまで製作されたウルトラシリーズのオムニバス劇場用映画と大きく異なる点があります。それは怪獣カタログとも言うべき、ストーリーよりも見せ場を重視した作りに徹しているという点でした。

 新作の映像は基本的に物語を進行するゾフィーだけにとどめ、オムニバス映像も劇中の人物を見せないように編集しています。その結果、大人にはなつかしく、子供には小難しいストーリーのない理想的な怪獣映画となっていました。

 この構成を、より盛り上げたのが当時のプロレス中継で大人気だったアナウンサー、古舘伊知郎さんの起用です。新日本プロレスの実況中継番組「ワールドプロレスリング」で好評だった、独特な言葉選びによる「過激実況」は、本作でも怪獣相手に冴えわたっていました。

 思えば第二期ウルトラシリーズ誕生のきっかけとなった『ウルトラファイト』も、山田二郎さんによるプロレス実況風のナレーションが魅力でしたから、怪獣とプロレス実況というのは相性がいいのかもしれません。おそらく古館さんの起用もそれが理由だと思われます。

 もっとも現在の視点から観ると、「ラッシャー木村」や「アンドレ・ザ・ジャイアント」といったレスラー名や、「どんとぽっちい」といった流行語は理解不可能な世代もいるでしょうから、その面白さは半減するかもしれません。

 正確に言えば、ストーリー性は皆無というわけでもなく、物語には流れというものがありました。最初は『ウルトラQ』の怪獣の紹介から始まり、その頃はまだ人間の手で怪獣と戦えていたものの、徐々に強力な怪獣が増えていき、その危機を救うべく「ウルトラマン」が地球にやって来たことになっています。

 このため、『ウルトラQ』と『ウルトラマン』の怪獣の登場数は全体の半数ほどとなっていました。その後、「ゼットン」にウルトラマンが敗れたことで、代わりにウルトラ兄弟たちが来訪し、最後には兄弟たちが結束して「テンペラー星人」を倒す流れです。

 ちなみに現在でも議論となる、「帰ってきたウルトラマン」が「ウルトラマンジャック」と呼ばれるようになったのも本作が初めてでした。この時は誕生から13年も経過していたことで寝耳に水と思った人も多くいましたが、それからさらに40年も経過したわけですから、「ジャック」呼びが一般的になるのは当然かもしれません。

 ウルトラシリーズ空白期を支えた本作がなければ、現在のように新作のウルトラマンたちを見ることもなかった可能性はあります。そういう意味では、この映画はウルトラシリーズの歴史をつなげた作品といえるのではないでしょうか。

(加々美利治)

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