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『Zガンダム』エゥーゴはなぜ「ガンダムMk-II」を使い続けた? 『ZZ』でもフル活用!

マグミクス / 2024年3月24日 6時10分

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■パーツも3機分しかない!

「ガンダムMk-II」は、アニメ『機動戦士Zガンダム』の主人公「カミーユ」が搭乗するモビルスーツ(以下MS)として、作品前半の顔役ともいえます。

 カミーユが所属することになる、反地球連邦組織「エゥーゴ」が、敵対する「ティターンズ」より奪取した機体であり、作品全体で3機がエゥーゴの手に渡ります。

「敵対勢力から奪った機体に主人公が搭乗する」という展開自体は、『Z』の前番組である『重戦機エルガイム』の後半主役機「エルガイムMk-II」でも見られましたが、「エゥーゴが3機を奪い取る」ことで「損傷時の修理はどうやってしているの?」という疑問を自然に解決しているのは「さすがガンダム。設定がしっかりしているな」と、放映時に感じたものです。

 ただ、この「ガンダムMk-II」、『Z』だけでなく、続編の『機動戦士ガンダムZZ』でもほぼ全編で登場しました。さらには『ZZ』の2年後である宇宙世紀0090年を舞台とする、マンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』(著:Ark Performance/メカニックデザイン:大河原邦男/原作:富野由悠季/原案:矢立肇/KADOKAWA)で、増加装甲を装備しつつ出力は15%向上した「フルアーマーガンダムMk-II」となり運用されています。

 それだけ長く使用される以上、よほどの高性能機なのかといえば、そうでもありません。

 エゥーゴが同時期に実戦投入していた「リック・ディアス」と比較してみましょう。

●ガンダムMk-II
・ジェネレーター出力:1930kw
・スラスター推力:8万1200kg
・センサー半径:1万1300m
・装甲材質:チタン合金セラミック複合材

●リック・ディアス
・ジェネレーター出力:1833kw
・スラスター推力:7万4800kg
・センサー半径:1万1500m
・装甲材質:ガンダリウムγ(ガンマ)

 ジェネレーターとスラスターで「ガンダムMk-II」がわずかに勝りますが、センサーと装甲では「リック・ディアス」が上回ります。

 さらにいうなら「存在しなかったこと」にされていたとはいえ「ガンダムMk-II」開発開始の2年前である、宇宙世紀0083年に実戦投入されていた「ガンダム試作3号機『ステイメン』は、下記のようなスペックでした。

●ガンダム試作3号機「ステイメン」
・ジェネレーター出力:2000kw
・スラスター推力:18万8800kg
・センサー半径:不明
・装甲材質:ルナ・チタニウム

「ルナ・チタニウム」とは「ガンダリウム合金」の一種です。全周囲モニターも採用していますから、試作3号機は「ガンダムMk-II」の性能を上回っているとすらいえます。

 そうしたわけでティターンズが、連邦系技術の総力を上げて試作した「我々の、我々による、我々のためのガンダム」であるところの「ガンダムMk-II」は、さほど高性能機とはいえません。実際、本機の設計者であるカミーユの父、「フランクリン・ビダン」は「あんなもの、もういらんでしょう」と、「ガンダムMk-II」が奪われても気にしていませんでしたし、「クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)」も「加速性能は抜群」と評価するものの、弱装甲については「Mk-IIは所詮Mk-II」と評価していません。

 にも関わらず、エゥーゴは並々ならぬ執念で「ガンダムMk-II」を実戦化します。構造上の不備があった本機に対して、数回の改修を行うことで(資料によっては装甲がガンダリウムに換装されたともあります)、信頼性を向上させたのです。さらに、サポートメカとして「フライングアーマー」「Gディフェンサー」「メガライダー」「フルアーマー」が製造され、高性能化する他勢力MSに対抗できる性能を維持したのです。

 特に「フルアーマーガンダムMk-II」は、パイロットとしての技量に定評のある「ヤザン・ゲーブル」が搭乗していたとはいえ、宇宙世紀0093年の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場するMS「ヤクト・ドーガ」に近い性能と思われるMS「ディジェ・トラバーシア」とある程度、互角に戦うほどの高性能を発揮しています。

 実際の戦争でも、例えばフランスは旧日本軍の九五式軽戦車に増加装甲を付けて、独立勢力鎮圧に使うなど「敵から奪い取った兵器を改良して使う」実例がないわけではありません。エゥーゴとティターンズは元々、同じ地球連邦軍ですから、整備や補給の規格が同じであるなど、運用がしやすい環境もあったのでしょう。

 とはいえ「ガンダムMk-II」を、長期間継続的に使用するためには、修理用部品も生産せざるを得ないでしょうし、その維持コストに見合うほどの高性能機かといえば、可変型MSも多数登場する時代ですから、微妙にも感じられます。

 エゥーゴはなぜ、多大な維持コストを支払ってまで、そのような「ガンダムMk-II」を維持し続けたのでしょうか。

■理由は「『ガンダム』だから」

「黒いガンダム」ことティターンズ仕様の「Mk-II」。BANDAI SPIRITS「RG 1/144 ガンダムMk-II(ティターンズ仕様)」 (C)創通・サンライズ

 おもちゃ会社の都合といったメタ的な話はさておき、物語世界の整合性という観点から考察してみましょう。

 エゥーゴが「ガンダムMk-II」を維持、運用し続けた理由、それは「反地球連邦組織」である彼らにとって、「ガンダム」がどうしても必要なものだったからではないでしょうか。

 エゥーゴと敵対するティターンズは「ジオン狩り部隊」として知られる精鋭部隊です。ですから、それと敵対するエゥーゴは「ジオン残党」と同一視されやすい存在といえます。しかし、実際のエゥーゴには多くの穏健な地球連邦軍人が参加しており、彼らの多くは「自分たちはジオン残党ではない。ティターンズが30バンチ事件で民間人を殺害するような、ジオン公国と変わらない愚行を重ねているから、仕方なく戦っているだけだ」というスタンスでしょう。

 ですから、エゥーゴは「自分たちはジオン残党ではない。地球連邦の改革者なのだ」という宣伝をしたかったでしょうし、そのために「地球連邦の象徴である『ガンダム』をフラグシップ機として運用している」というのは、最高の宣伝効果があると見なしていたのでしょう。

 思えば、エゥーゴの主力MSである「リック・ディアス」も「γ(ガンマ)ガンダム」として計画された機体でした。それを幹部であるクワトロが「『ガンダム』ではない名前に」と横やりを入れたわけです。彼が搭乗する「百式」も「デルタガンダム」として開発された機体でした。恐らく、ここでも「ガンダム」に複雑な感情を持つクワトロが、ナガノ博士と相談して「百式」と命名したのでしょう。

 戦力確保のために、元ジオン軍人であるクワトロらに配慮するエゥーゴの事情があるのだと思いますが、そのような「ガンダム」を巡る駆け引きのなか、「アースノイドがスペースノイドを威圧するために開発した『ガンダムMk-II』」を入手したことで「エゥーゴのフラグシップ機」としての運用が政治的に求められたのでしょう。

 つまり「白いガンダムが味方にいる連邦系組織であることを宣伝したい」という政治的事情により、「ガンダムMk-II」を白く塗り替えたのでしょうし、その反響が大きかったから「撃墜されては困る」として「Gディフェンサー」などの、サポートメカも整備されたのでしょう。

 そして「ガンダムMk-II」は「改良に耐える素性のいい機体」だったのでしょう。実際、優れたニュータイプとはいいにくい「エマ・シーン」が操縦する「ガンダムMk-II」は、可変MSで格上の「ガブスレイ」「ハンブラビ」などと何度も交戦していますが、撃墜されていません。格上の「パラス・アテネ」との交戦でも、損傷していたのに相打ちに持ち込んでいます。

『ZZ』でも、おもに搭乗していた「エル・ビアンノ」はパイロットとしての経験が少ないにも関わらず、性能では同等か上回るはずのネオ・ジオンMSを相手に善戦し、圧倒的に格上のMS「クイン・マンサ」と戦っても中破に留まっています。

 つまり、単純なスペックに現れない運動性能や、射撃精度などが非常に優れており、数次の改良で「とても扱いやすい機体」に進化していたということなのでしょう。

 実際、『ZZ』時よりも出力が向上したとはいえ、鈍重にも見える「フルアーマーガンダムMk-II」に搭乗したヤザンは、シャアの射撃を受けても被弾しておらず、性能にも不満を持っていません。ヤザンが直近で搭乗していたのが、ジェネレーター出力3040kw、スラスター推力18万3000kg、センサー半径1万3000mの可変MS「ギャプラン」であったことを考えるなら、「ガンダムMk-II」はスペックには見えない部分の高性能を持っていた、ということになるでしょう。

「ジムIII」や「バーザム」など、「ガンダムMk-II」の基本設計を反映した量産機が数多く存在するのは、この機体の素性の善さや運動性能を示していると考える次第です。

(安藤昌季)

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