『OVERMANキングゲイナー』本当に富野監督作品?突如始まったダンスにポカーン
マグミクス / 2020年9月7日 19時10分
■「これ、本当に富野監督なの?」
2002年9月7日は、ロボットアニメ『OVERMANキングゲイナー』(以下、キングゲイナー)が放送開始された日です。総監督は『機動戦士ガンダム』など多数の名作ロボットアニメを手掛けた富野由悠季氏。 過酷な環境から新天地を目指す「エクソダス」に参加した人々とそれを妨害しようとする勢力の間で起こった戦いと、人間模様を描いています。設定だけを見ていると悲壮な作品に思えますが、実際にはオープニングから登場キャラクターやオーバーマンたちが踊りまくる、エンターテイメント性の高い作品として注目を浴びました。放送当時、友人と一緒に観てアナ姫やオーバーマンのダンスにあっけにとられた記憶を持つ、ライターの早川清一朗さんが回想します。
* * *
筆者にとって、富野由悠季氏は物心つく前から素晴らしい作品を次々と作り上げ、今の自分の一部を形作ってくれた大恩人です。代表作も『無敵超人ザンボット3』『無敵鋼人ダイターン3』『機動戦士ガンダム』『伝説巨神イデオン』など、名前を挙げていけばキリがありません。
また、富野氏は「皆殺しの富野」との異名を奉るほど大量に人が死ぬ陰惨なものが多く、それが魅力でもありました。小説『オーラバトラー戦記』や『リーンの翼』も読みましたが、一切遠慮のない残虐描写ぶりは、まだ学生だった筆者にはかなり刺激が強いものでした。
そんな富野氏が2000年の『ターンAガンダム』以来の新作を総監督として手掛けるというのですから当然見るに決まっています。ただ『キングゲイナー』はWOWOWの有料放送だったため、当時の筆者は見る環境がなく、友人に頼んで録画しておいてもらうハメになったのです。放送開始後は「2ちゃんねる」などを極力見ないようにしてネットからの情報を断ち、極力フラットな気持ちで『キングゲイナー』を見られるように心がけ、友人宅を訪れるタイミングをうかがい、ついにその日がやってきたのです。
『キングゲイナー』を見る直前、友人からは「すごいぞ?」と言われたのを覚えています。そして何がすごいのか、その理由は数十秒後に、簡単に理解できたのです。
■敵も!味方も!人も!ロボも!みんなで踊る!
しれっとした顔で主人公のゲイナーがヒロインのサラとダンスを踊り、サラを背中に載せてスケーティングを始めたとき「いったい俺は何を見ているんだ」と度肝を抜かれました。さらにはアナ姫をはじめとする登場人物たちがモンキーダンスを踊りまくり、挙句の果てには敵味方のオーバーマンまでも踊り出し、「ああ、この作品はこういう路線で行くのか……どういう路線だろう」と、いつものようなダーク路線を想像していた筆者は、コミカルな路線の富野総監督という方向性が一瞬分からず、戸惑ってしまったのです。
しかし思い返せば、富野総監督は『戦闘メカ ザブングル』などコミカル路線の作品も手掛けています。別に不思議なことではありませんでした。
主題歌の「キングゲイナー・オーバー」は作詞が井荻麟こと富野由悠季総監督、作曲が田中公平氏、ボーカルは福山芳樹氏と、盤石の構えが取られていました。非常に乗りが良く、確かに思わず踊り出してしまいそうな名曲です。
ただ、当初はもっとシリアスな作品で、キャラクターの表情もシリアスなものしか用意されていなかったそうです。後に富野総監督はインタビューで、自分が出した歌詞に対して、田中公平氏がものすごい曲を出してきた。あれに応えるにはオープニングの絵コンテで田中氏を黙らせるようなものを作るしかない。そういった理由で一気にコミカルな路線へと舵を切ったことを明かしました。曲ひとつで作品全体の雰囲気を変える力をもつ田中氏と、それに応じる富野監督、どちらもクリエイターとして恐るべき存在と言わざるを得ないでしょう。
作品自体も、新天地を求めて集団で移動する「エクソダス」という過酷な状況下をたくましく生きる人々の人間模様を中心に描かれており、骨太でありながら愉快という絶妙なバランスが保たれていました。特に17話「ウソのない世界」で、敵の策略によりうそをつけなくなってしまった主人公、ゲイナーの取った行動は必見です。この1話だけでも、十分伝説と呼べるだけの作品と言えるでしょう。
『キングゲイナー』から18年が経ちましたが、富野総監督も田中氏も、いまだ健在です。果たしてこれからどんなものを生み出してくださるのか。今もまだ、楽しみでたまりません。
(ライター 早川清一朗)
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