『鬼滅の刃』だけではなかった! 2020年、アニメ業界が”揺れた”6つの出来事

マグミクス / 2020年12月31日 10時10分

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■「緊急事態宣言」後の世界、予見したアニメ作品も…?

 コロナ禍にステイホーム、洋画の話題作の相次ぐ公開延期、そして一大社会現象となった『鬼滅の刃』ブーム……さまざまなニュースが駆け巡った2020年の国内エンタメ界の話題を、アニメーション作品を中心に振り返ります。

●1月 『映像研には手を出すな!』放映スタート

 1月6日よりNHK総合にて、大童澄瞳原作、湯浅政明監督のTVアニメシリーズ『映像研には手を出すな!』全12話の放送がスタート。女子高生・浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメの電撃3人娘が「映像研」を立ち上げ、アニメーションづくりに情熱を燃やす学園ものです。地味に思われがちなアニメ制作ですが、変わり者のみどりが想像した世界が、プロデュース能力に優れたさやかとアニメーター志望のツバメの協力によって色彩豊かなアニメーション世界へと広がっていく様子は、視聴者の心を躍らせるものがありました。

 第8話の学園祭エピソードで、みどりがツバメのことを「(友達より大切な)仲間です!」と告げるシーンにグッときた人も多かったようです。みどりの個性的な声を演じた伊藤沙莉さんは、女優としても大変な売れっ子になっています。

●4月 「東京五輪2020」を予言した『AKIRA』が4Kリマスター化

 大友克洋監督の傑作アニメ『AKIRA』(1988年)が4Kリマスター化され、4月3日よりIMAXシアターで上映されました。東京オリンピックの2020年開催を的中させていたことでも話題を呼んだ『AKIRA』ですが、劇中ではAKIRAの封印が解かれたために東京都心は壊滅状態に陥ります。奇しくも新型コロナウイルスの感染拡大によって、3月24日には東京五輪の延期が発表。さらに4月7日には東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡、続いて4月16日には全国を対象に緊急事態宣言が行われ、外出の自粛や映画館やライブハウスなどの人が集まる施設の使用制限などが求められました。

 公開予定だった映画は、次々と公開延期に。夜の街からは人影が消え、『AKIRA』で描かれたネオ東京さながらの荒涼とした光景が広がりました。

●6月 究極の手描きアニメ『音楽』が海外で高評価

 1月からミニシアター系でロングラン上映されていたアニメーション映画『音楽』が、フランスで6月に開催された「アヌシー国際アニメーション映画祭」で最優秀オリジナル音楽賞を受賞しました。2019年にはカナダの「オタワ国際アニメーション映画祭」でグランプリも受賞しており、海外で高い評価を得ています。

 岩井澤健治監督が単独で7年以上の歳月を費やし、作画枚数は4万枚超えとなった大変な労作です。実際の人の動きをトレースする「ロトスコープ」という伝統的なアニメ手法が使われ、クライマックスとなるロックフェスシーンが臨場感たっぷりに描かれています。12月16日にブルーレイ&DVDがリリースされているので、究極のアナログ表現を年末年始に楽しんでみてはいかがでしょうか。

■あらゆる世代を魅了した『鬼滅の刃』の真っ直ぐさ

現代を舞台に、アニメーションで描かれたNetflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』 (C)“JAPAN SINKS : 2020”Project Partners

●7月 賛否両論となったNetflixアニメ『日本沈没2020』

 湯浅政明監督の新作アニメ『日本沈没2020』が、7月9日よりNetflixで配信されました。1970年代に大ブームを巻き起こした小松左京氏のSF小説『日本沈没』をベースに、時代設定を現代に変え、女子中学生の武藤歩たち家族が不確かな情報が交錯するなかを生き抜くサバイバルアクションとなっています。

 同じくNetflixで配信された『DEVILMAN crybaby』(2018年)も手がけた湯浅監督だけに、主人公一家は想像を絶する試練に直面します。極限状態に陥った人々のネガティブな部分も描かれていることから否定的な声もあがり、賛否両論を呼ぶ問題作となりました。

 小松氏の原作小説は、日本列島を消滅させることで逆に「日本とは、日本人とは何か?」という問題を投げかけていました。自粛警察やSNS上でのバッシングなど、コロナ禍という閉塞的な社会状況もまた、令和時代の日本人像を浮かび上がらせているのかもしれません。

 また7月18日、コミック原作の実写映画『君に届け』(2010年)などに主演した俳優の三浦春馬さんが自宅で亡くなりました。TVドラマや舞台でも大活躍した三浦さんは、3Dアニメ『キャプテンハーロック SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK』(2013年)では声優にも挑戦しています。享年30歳。エンタメ界のこれからを担う逸材の、あまりにも早すぎるお別れでした。

●9月 京アニ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が公開

 9月18日、「京都アニメーション」の新作『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が公開されました。戦場から帰還した負傷兵ヴァイオレットが、恩人であるギルベルト少佐の残した言葉「愛している」の意味を知るために、手紙の代筆業を始めたTVシリーズの完結編です。

 人間は思っていることとは逆の言葉を口走ってしまう、本当に大切なことはなかなか言葉にはできない……という繊細なテーマ性と作画力は、京都アニメーションならではのもの。2019年7月に「京アニ放火事件」が起きたことから一時は公開が危ぶまれていましたが、初日満足度では1位を記録、興収20億円を超える大ヒットとなっています。

●12月 劇場版『鬼滅の刃』が19年ぶりに興収記録更新

 吾峠呼世晴氏のベストセラーマンガを原作にした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が10月16日から公開されました。TVアニメシリーズは2019年にTOKYO MXなどで全26話が放映されていましたが、NetflixやAmazonプライムなどで動画配信されたことで人気に火がついた形です。洋画の話題作の公開延期が相次いだことも重なり、全国403館での拡大上映には老若男女の幅広い層の観客が集まりました。

 公開から11週経っても人気は衰えず、12月28日には『千と千尋の神隠し』(2001年)の持つ国内興収324億円の記録を更新しています。19年ぶりの快挙となりました。

 コロナ禍に見舞われた大変な2020年でしたが、『無限列車編』のメインキャラクターである「炎柱」煉獄杏寿郎の「老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ」「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ」という言葉に多くの人が励まされたようです。大正時代を熱く生きた杏寿郎の言葉は、令和を生きる私たちに向けられたメッセージのようです。

(長野辰次)

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