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人気漫画家たちの伝説的取材エピソード 「取材対象が逮捕?」「オリラジが同期」

マグミクス / 2022年6月2日 18時30分

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■ホームレスを描くなら自分もホームレスに

 マンガ雑誌の次週告知に「作者都合により休載します」とあればがっかりしますし、「作者急病により休載します」は心配で眠れません。ただ「作者、取材のため休載します」は、逆に胸踊ります。漫画家の先生にとって、良い作品を描くために「取材」は非常に重要なもの。なかにはリアリティを追求するあまり、驚くような潜入取材をするような方もいるようです。今回は漫画家の「取材」に関する説的エピソードを、比較的近作のものからご紹介します。

●「お笑い」の現場を学ぶためにNSCに入学!『べしゃり暮らし』森田まさのり先生

 森田まさのり先生による究極の芸人マンガ『べしゃり暮らし』。主人公・上妻圭右が「学校の人気者」からプロの漫才師に成長していく過程を描いた本作は、その舞台裏のリアリティが本職の芸人さんからも高く評価されていました。

 それもそのはずで、森田まさのりさんは本作を執筆するにあたり徹底した取材を敢行、なんと実際に吉本興業の養成所NSCに東京10期生として入学していました。そして、「芸人の卵」として舞台に立っていたのです。ちなみに同期にはオリエンタルラジオ、トレンディエンジェルと錚々たるメンバーが揃っていました。

その後、森田まさのり先生は大喜利をテーマにした青春マンガ『キッド アイ ラック!』の作者・長田悠幸先生と「漫画家」というお笑いコンビを結成し、「M-1グランプリ2018」にエントリー。並み居る強豪のなか、3回戦まで勝ち進む快挙を達成しています。

●実際にホームレス生活を送ってみた『ホムンクルス』山本英夫先生

 特殊性癖を持ったヤクザと殺戮マシーンである殺し屋「イチ」との生死を賭けた純愛(のようなもの)を描いた『殺し屋1』、頭蓋骨に穴をあける「トレパネーション」によって今まで見えなかった他人の過去のトラウマが異形の怪物として見えるようになったホームレスの男の物語『ホムンクルス』など、世間の度肝を抜く「問題作」を描き続けてきた山本英夫先生。彼もまた作品を執筆するうえで、念入りな取材を行います。

 例えば「のぞきのプロ」を描いた初期の代表作「のぞき屋」シリーズでは、実際に探偵学校に入学(そして卒業)。『殺し屋1』も舞台となる「ヤクザマンション」のモデルとなった歌舞伎町のマンションに、実際に何ヶ月も住みこみました。また、『ホムンクルス』はホームレスの実態を描くために西新宿でホームレス生活を送り、催眠療法もがっつり取材したそうです。ホームレスの食生活のリアリティなどは、こうした経験が役立っています。

 そうなると、「実際に山本先生もトレパネーションしているのでは?」という疑問が湧きます。インタビューなどで見る山本先生は深くニット帽をかぶっているので、なおさらファンの想像を掻き立てるのですが、少なくとも明言はされていません。ちなみに、山本先生と親交のある身体改造ジャーナリスト・ケロッピー前田氏は、トレパネーション実践者たちの証言をまとめたドキュメンタリー映画『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』が、重要な資料になっていると語っています。

■「リアリティ」を超えてもはや「リアル」!? 究極の取材

大胆過ぎる取材で圧倒的リアリティを誇る裏社会マンガ『闇金ウシジマくん』1巻(小学館)

●取材した人がのちに逮捕もされる……『闇金ウシジマくん』真鍋昌平先生

 特殊な業界を描いた作品にリアリティがあるかどうか、判断するのは「現場」の方々です。そんななか、ドラマ、映画もヒットした『闇金ウシジマくん』の作者・真鍋昌平先生の精緻な描写には裏社会に精通した方々も瞠目したと言われています。読むたびにみぞおちあたりに黒い感情が生まれる『ウシジマくん』ですが、あの圧倒的な臨場感は真鍋先生のチリひとつ見逃さないような観察眼によって成り立っていたのです。

 例えば「ホスト編」執筆の際にホストの寮に訪れた際は、ゴミ箱や冷蔵庫のなか、さらには排水溝に落ちている髪の毛まで「人間関係の象徴」として写真に収めたとのこと。確かに『ウシジマくん』で描かれる退廃的な生活のリアリティには、放置された「ゴミ」が大きく貢献しています。

 また、真鍋先生は「本職」の方々も「恐怖より興味が勝つ」(堀江貴文氏との対談での発言)として、直接取材を敢行します。取材のコツは「ゆっくり距離を詰める」ことであり、気に入られすぎて鬼電がかかってくることもあったとか。さらに、かつて強盗シーンを描くために取材を申し込んだその筋の方が、のちに本当に強奪事件を起こして捕まったこともありました。『ウシジマくん』はリアリティどころか、もう「リアル」なのです。

 恐怖や煩わしさを上回る、「知りたい」という気持ちと「描きたい」という執念。ただただ漫画家の先生たちには感服するばかりです。

(片野)

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