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<大森カンパニー人情喜劇「あじさい」>ロシア人ホステス・タチアナ役の伽代子が出色

メディアゴン / 2015年12月23日 10時0分

写真

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

下北沢の駅前でクロワッサン鯛焼きを買って、中野に向かった。このところ筆者が強力に押している東京ヴォードヴィルショウの分派活動、大森カンパニーのプロデュース公演「あじさい」。そのゲネプロ(事前の総舞台稽古)を見るためだ。

(「あじさい」の画像:http://mediagong.jp/?page_id=14083)

劇場に着くと、演出の大森博(出演も)が「すみません、40分押しです」と言って迎えてくれた。ゲネプロは、大抵定刻より遅れる。いろんなチェックがすべて行われるからだ。

楽屋に行く。4畳半もないほどの三角形の楽屋は女優さんや俳優さんでいっぱいだ。大規模な商業演劇ではひとりひとり楽屋が与えられるが彼らは皆一つの部屋だ。マネジャーも全員に付いているわけではないのでうるさくなくて却って清々しい。芸能界っぽく無いのだ、芝居をやる仲間なのだ。

知っている顔が見える。ヴォードヴィルショウの古参で今は吉本興業に所属している坂本あきら。この人はキレの良い動きの芝居を得意とする人だ。年寄りの役らしい。年齢相応に頭は禿かかっていて「年寄りなのに良い動き」の芝居をするのだろうと思うと自然と笑みがこぼれてくる。

もうひとり知った顔がいる「欽ドン!良い子悪い子普通の子」時代からの盟友、山ちゃんこと山口良一。この人の芝居で僕の拙いコント原稿が何度救われたことか。山ちゃんは言う。

 「何だが、本番よりゲネプロが緊張するんだよね最近」

山ちゃんは筆者と同い年だから60歳のベテランだ。このベテランにして稽古の方が緊張するというのは芝居というモノが奥深いと言うことだろう。

山ちゃんの衣装はニッカボッカだ。ふと周りを見渡すと、男性陣は皆、ニッカボッカ、土建屋さんの話だ。筆者は嬉しくなる。演出助手がお盆に定食の用意をしている。舞台上で飯を食うのか、飯を食う芝居で笑いが取れたら喜劇役者冥利に尽きるだろう。筆者はさらに嬉しくなる。

客席に移ってゲネプロの始まりを待つ。

本ベル。客電が落ちるとサッチモの歌うゴスペル・ソングDown by the Riverside(ダウン・バイ・ザ・リバーサイド)が流れてきた「あれ?ジャズ?」と思うまもなく舞台が明転して、そこが、場末の定食屋だと分かる。男優たちはみな、この近所の飯場に寝泊まりしながら日給月給で働く根無し草の解体屋なのである。

この定食屋「味彩(あじさい)」を営む二人の姉妹、そして、ロシア人のホステス、タチアナ。タチアナ役の伽代子が今回は出色である。流れ流れてベラルーシから日本にやって来てキャバレー勤めをしているのである。ロシア語なまりの流ちょうな日本語を喋るという設定をもらって生き生きとしている。

どうやら最近は笑いにも目覚めたらしい天宮良を始め、坂本あきら、山口良一、大森ヒロシ、石坂史郎、宮原将護の男優陣も、長峰みのり、伽代子、遠海まりこ、後東ようこの女優陣もこの定食屋に集まる人間たちは皆、人には言えない悲しい過去を持っている。その過去がこの芝居の中核なので書くわけには行かない。

藤山寛美の松竹新喜劇や浅草の軽演劇を理想だとする大森博の演出は、丁寧に貼られた竹田哲士の脚本の伏線を壊さずきれいにまとめている。

ところで、これは人情喜劇だから、泣いても言い訳だけれど、筆者はもう少し笑いたい。千秋楽にはどう変わっているか楽しみだ。

大森カンパニープロデュース「あじさい」は12月22日(水)~27日(日)、中野テアトルBONBONにて。

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