マイナス金利が解除されたから…だけではない、金利の知識が必要な理由
MONEYPLUS / 2024年4月24日 7時30分
マイナス金利が解除されたから…だけではない、金利の知識が必要な理由
12回にわたって続けてきた「金利のしくみ」も、これが最終回です。今回は、どうして金利の知識が必要なのかについて、お話します。
金利の知識が必要な理由
過去11回、金利についてさまざまな話をしてきましたが、金利の知識を身に付けなければならない理由は、ここ最近、日銀が長期金利で1%を超える取引を容認したり、マイナス金利の解除をしたりしたことで、ようやく金利が産まれ始めてきたからというだけではありません。
実際、マイナス金利が解除されたからといって、グングンと金利が上昇するような状況ではありません。一部では「マイナス金利解除によって、変動金利型住宅ローンの金利が上昇してしまうのではないか」と心配する声も上がっていましたが、恐らく、大きく上昇するような事態にはならないと考えています。
なぜなら、マイナス金利が導入された2016年2月の時に、短期プライムレートは下がらなかったからです。
変動金利型住宅ローンは、基本的に短期プライムレートを参考値にしているため、その動きに連動します。ところが、過去の短期プライムレートの最頻値の推移を見ると、最後に引き下げられたのが2009年1月13日で、その後、黒田日銀前総裁のもとで量的・質的金融緩和やマイナス金利導入といった金融緩和策が採られたにも関わらず、低下は確認されていません。
マイナス金利導入時に下がらなかった短期プライムレートですから、マイナス金利が解除されたからといって上昇するという理屈にはなりません。物価水準が徐々に落ち着きを取り戻していることも考慮すれば、おいそれと金利は上昇しないでしょう。実は金利の知識が必要な理由は、もうひとつあるのです。
何パーセントの金利なら安全なのか
それは騙されないようにするための知識でもある、ということです。
近年、利殖勧誘事犯といって、「有利な資産運用」を謳い文句にした詐欺商法に引っ掛かったと思い、警察に相談する人の件数が増えています。警察庁が公表している「生活経済事犯」のデータによると、2022年に警察署に持ち込まれた利殖勧誘事犯の相談受理件数は2584件でしたが、2021年は3109件まで増えて過去最高でした。間もなく2023年の数字が発表される予定ですが、それだけ利殖を謳い文句にした詐欺行為が多発しているということです。
その話が詐欺かどうかを見極めるうえで、実は金利の知識が役にたちます。といっても、金利の専門的な知識はまったく不要です。ただ、今の金利水準がどの程度なのかということさえ把握しておけば良いのです。
今の長期金利が何パーセントか、すぐに答えられますか?
長期金利とは10年物国債の利回りを指していることは、この連載の中でも申し上げました。ちなみに3月28日時点のそれは0.705%です。
長期国債は、日本政府が公共工事の必要な資金や、財政赤字を穴埋めするために発行される債券で、少なくとも日本国内においては、最も信用力の高い発行体によって発行される債券であるため、同時期に発行されたあらゆる債券の中でも、最も低い利率が採用されています。その金利水準が今、年0.705%なのです。
そして、債券の信用力が下がるほど、リスクプレミアムといって金利が上乗せされていきます。それでも、最上位格付であるAAA(トリプルA)から、投資適格のうち最も低いBBB(トリプルB)までの金利差は、現在の金利水準だと平均1%程度と言われています。つまり10年国債の利回りが0.705%だとしたら、投資適格の最低位格付に属する債券の利回りは、1.7%前後になるということです。
日々の金利水準をチェックする
この知識があれば、たとえば「元本確保で年5%の確定利付き」を謳い文句にした金融商品は、相当にリスクが高いことが、お分かりいただけるでしょう。
というよりも、投資適格と言われる債券のなかで、最上位と最低位の金利差が1%程度ですから、現在の長期金利の水準と、この金利差が頭に入っていれば、「元本確保で年5%の確定利付き」という金融商品は、ほぼ詐欺まがいであることが事前に分かるはずです。
このように、金利の知識を身に付けることは、詐欺まがいの金融商品に騙されないためにも重要なのです。
少なくとも、今の金利水準が短期金利と長期金利で、ともに何パーセントなのかということは、常に把握しておくことをお勧めします。この手の金利水準は、日本経済新聞のマーケット総合にも日々出ていますし、インターネットでさまざまな金融関連サイトを見ていけば、簡単に把握できます。
ちなみに現時点における短期金利の指標的な存在である、無担保コール翌日物金利が、平均で年0.077%、長期金利の指標である10年国債利回りが0.705%です。この水準を常にチェックして、最新の数字を頭に入れておくようにして下さい。
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(鈴木雅光)
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