国産メーカーも見習って欲しい! 50周年を迎えたボルボの事故調査隊が積み重ねてきた「安全」への挑戦
MōTA / 2020年11月10日 7時50分
誰よりも安全にこだわっているスウェーデンの自動車メーカーといえば、ボルボだ。2020年10月、ボルボの事故現場調査チームは創立50周年を迎えたが、頑なに安全を謳うボルボはいったいどれだけのことをしているのか。その驚くべき徹底ぶりを知れば「次はボルボに…」と思うかもしれない。
ボルボの安全はこうして作られる! その半世紀の努力とは
えっ、調査員が24時間体制で待機!?
ボルボの街としても知られる、スウェーデンのイェーテボリ市。もしここでボルボ車が事故を起こそうものなら、「ボルボ・カーズ・アクシデント・リサーチ・チーム」の事故調査員が昼夜を問わず飛んでくるだろう。何と彼らは、事故調査のために24時間体制で待機しているというのだ。チームは1970年から活動しており、これまで4万台以上の車両、7万人以上の乗員のデータを分析してきた。現在のボルボ車に搭載されている安全システムの多くはこのチームの研究結果に基づいて設計されているというから、彼らは隠れたボルボの顔とも言えるだろう。
ここまでやる!? まるで刑事のような調査
さて、事故現場にチームが到着すると、まずは一連の出来事を可能な限り詳細に記録する。衝撃の強さの程度やセーフティシステムの介入タイミング、乗員の様子、天候、事故発生の時間帯、路面標示の状態などなど、事細かに検証していく。さらに、一般公開されている警察の報告書を要求し、運転手に連絡を取り、可能な限り事故車両や被害者の医療記録も調査。ボルボ・セーフティセンターの行動科学者や物理学者、生体力学の専門家まで交えて、あらゆる方向から事故やケガの原因究明を行うのだ。
実験現場でもこだわる! 女性のダミー人形を導入
事故現場でここまで徹底しているボルボだが、その現実的な対応ぶりは実験現場でもぬかりなく発揮されている。たとえばテレビなどでよく目にする、車の衝突実験で痛い目に遭っているダミー人形。多くの自動車メーカーが未だに男性型のダミーのみを使い続けているのに対し、ボルボは1995年から女性型のダミーを取り入れている。ボルボが収集してきた事故データに、衝突事故を起こすのは男性だけなどという事実はないからだ。
実験データを無償で公開
ボルボはこれらの実験データに基づいて、女性のむち打ち症のリスクを減らす独自のフロントシートなどを開発している。なお、ボルボはこれら女性型ダミーでの実験を含め、50年に渡る事故調査の研究結果や貴重な社内実験データを「E.V.A. プロジェクト」として惜しみなく公開。誰でもダウンロード出来るようにして、自動車業界全体の安全性向上にも努めている。
1955年に3点式シートベルトを「発明」したボルボは、当時あえて特許を無償公開。3点式シートベルトはその後世界中のクルマに採用され、数知れないほどの命を救ってきた。皆の安全を何よりも優先する精神は今でも息づいているのだ。
批判の声も恐れない! ボルボが打ち出す3つの具体的対応策
そして2020年、ボルボは大胆かつ踏み込んだ安全対策を実行に移した。なんと、すべてのボルボ車の最高速度を制限したのだ。これまでの調査から分かった主な事故原因である「スピードの出し過ぎ、飲酒や薬物使用による酩酊、注意散漫」を未然に防ぐため、疑問の声や批判がありながらもボルボは安全を追求し続けている。
1:最高速度を時速180キロに制限
ボルボは2020年より、すべてのボルボ車の最高速度を180km/hに制限した。また将来的には学校や病院の近くで速度を自動的に制限をするといったことも視野に入れるという。
2:初心者用のキーで貸し借りも安心
ボルボ車のオーナーが、免許を取ったばかりの子どもやペーパードライバーなどに車を貸す際、最高速度を制限する「ケア・キー」を選択できる。
3:ドライバーの酩酊具合をモニターする
酩酊状態や注意散漫時の危険運転に対処するために、ドライバーモニタリングカメラとその他センサーを併用。ドライバーが明らかに酩酊している、もしくは注意が散漫し、死亡・重傷事故のリスクがあると判断すると、車両を停止させる。
このドライバーモニタリングシステムは、2020年代前半登場の次世代プラットフォーム搭載車から採用を進めていく予定だ。
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