GX経営に向けて 第4回 カーボンニュートラルに向け、CO2分離回収技術の注目ベンチャーが登壇 - GXリーグレポート
マイナビニュース / 2024年4月25日 8時30分
とはいえ、まだまだ日本ではDAC市場が育っていない現状がある。今後、同社はDACシステムの販売を模索しつつ、まずコンソーシアムを組んでDACプラントを造り、CO2の回収を進めながらビジネスの拡大を図ることも検討中という。
○細菌を活用した窒素固定技術でGXの課題を解決
続いてはSymbiobeの代表取締役・伊藤宏次氏が登壇した。
伊藤氏は現状のGXにおける課題として、「日本のように資源産出の乏しい地域は海外情勢変化に対して脆弱」であること。そして「地球が持つ容量を超えて資源が大量に消費されている現状」があることを挙げ、その解決策として海洋性紅色光合成細菌を紹介した。
海洋性紅色光合成細菌は光合成を行うと同時に窒素を固定することで知られている。海洋性紅色光合成細菌は身の回りにある資源で増殖できるため、高単価かつコスト低減を図れるメリットがあるという。
この技術を用いることで、CO2から様々な有価物のアップサイクルが可能になると伊藤氏は説明する。たとえば肥料だ。化学肥料使用の削減に伴い有機質肥料への需要の増加が予想されている。そこで重要になるのが窒素含有量が高いなど機能性の高い有機質肥料であり、それを生み出すのに海洋性紅色光合成細菌が役立つというわけだ。
また、シルクの生産にも海洋性紅色光合成細菌が役立つという。実はシルクは天然繊維や合成繊維と比べて生産時CO2排出量が少なく、GX実現に重要な役割りを果たすのだ。
同社は今後、技術リスクの低い事業領域から市場参入を進め、まずは日本で循環モデルを構築。その後、海外市場にも順次展開を目指すという。
○生体を模倣した新しい材料でCO2排出量削減と経済の両立を目指す
続いては、JCCL取締役CTOの星野友氏が登壇した。
JCCLは九州大学発のスタートアップだ。日本初の炭素循環技術で世界のカーボンニュートラルを実現することを事業目的としており、CO2排出量削減と経済を両立する技術の開発を進めている。
星野氏によると、既存の工業的なCO2の分離回収に使用される「化学吸収法」は、アミン等のアルカリ性の水溶液とガスを接触させ、CO2等の酸性ガスを選択的に吸収させるという手法とのこと。ただし、このときに110〜130℃の高温で加熱する必要があり、むしろカーボンポジティブになってしまうという課題を抱えていた。
そこで同社ではNEDOの支援のもと、高温加熱が不要なCO2分離材料の開発をスタート。着目したのは生体内のガス交換システムだ。これは、体内で発生したCO2を体外に排出する機構のこと。実は我々生物は、高温加熱などを行うことなく常温常圧で効率的にCO2排出を行っているのだ。
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