グラファイトを用いた電源不要の磁気浮遊するプラットフォーム、OISTが開発
マイナビニュース / 2024年4月9日 19時14分
沖縄科学技術大学院大学(OIST)は4月8日、グラファイト(石墨/黒鉛)と磁石を用いて、外部電源に頼ることなく真空中に浮遊するプラットフォームを設計したことを発表した。
同成果は、OIST 量子マシンユニットのジェイソン・トゥワムリー教授らの研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。
外部電力を必要としない浮遊プラットフォームを開発するにはいくつかの課題がある。最大のハードルは、振動するシステムが外力によって時間と共にエネルギーが失われる時に発生する「渦減衰」であり、導電体が強力な磁場を通過すると、電流の流れによってエネルギーが失われる。このエネルギー損失が、高度なセンサの開発に磁気浮上を利用することへの課題となっていたという。そこで研究チームは今回、エネルギーを失うことなく浮遊・振動するプラットフォームの開発を試みることにしたとする。
「エネルギーを失うことなく浮遊・振動する」ということは、一度動き出すと、追加のエネルギー入力がなくても、長期間振動し続けるということであり、このような「摩擦のない」プラットフォームは、力、加速度、重力を測定する新しいタイプのセンサなど、さまざまな用途に応用できる可能性があるという。
しかし、渦減衰を減らせたとしても、振動プラットフォームの運動エネルギーの最小化という別の課題もあった。このエネルギーレベルを下げることは、(1)センサとして使用する際にプラットフォームの感度が上がること、(2)量子領域(量子効果が支配的な領域)まで運動を冷却することで精密測定の新たな可能性が開ける可能性があること、という2点から重要だとする。つまり、真に摩擦のない自立浮遊プラットフォームを実現するためには、渦減衰と運動エネルギーの両方の課題を解決する必要があるという。
そのために研究チームが今回焦点を当てたのが、炭素の結晶形であるグラファイト由来の新素材の開発。グラファイトのような反磁性材料は外部磁場を印加されると反対方向の磁場が発生し、その結果として反発力が生じ、磁場から押し出される。そのため、反磁性材料を磁石の上に置くと、反発力が上方に向かって発生するので、その反発力が強ければ浮遊することが可能となるのである(中でも超伝導体は完全反磁性を備えているため浮上しやすく、リニアモーターカーにもそれが応用されている)。
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