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東北大など、磁場で制御された「量子計量」に由来する電気伝導信号を計測

マイナビニュース / 2024年4月25日 21時45分

画像提供:マイナビニュース

東北大学と日本原子力研究開発機構(JAEA)は4月23日、原子が三角形を組み合わせた「カゴメ格子」と呼ばれる構造で配列し、隣接した原子が持つスピンが120度ずつずれた形で配向している「カイラル反強磁性体」にて、印加磁場に追随して変化する特異な電気伝導信号を実験で捉え、理論モデルの解析により、これが磁場で制御された「量子計量」に由来することを突き止めたと共同で発表した。

同成果は、東北大 材料科学高等研究所のハン・ジャーハオ助教、東北大 電気通信研究所の同・内村友宏大学院生、同・深見俊輔教授、同・大野英男教授、JAEA 原子力科学研究所 先端基礎研究センターの荒木康史研究副主幹、JAEA スピン-エネルギー科学研究グループの家田淳一グループリーダーらの共同研究チームによるもの。詳細は、「Nature Physics」に掲載された。

物質中の電気伝導を理解するには、その担い手である個々の電子の挙動に注目する必要があり、そこで重要となるのが量子力学となる。量子力学において電子の挙動は、その量子状態に対応する波動関数の構造で記述される。この波動関数に特異な構造(ねじれている、ひずみがあるなど)があれば、電子の経路が曲げられ、電圧が電流と異なる方向に応答する、電圧と電流が比例しないなど、オームの法則を超越した(非オーム的な)電気伝導が現れることが理論的に予言されている。つまり、このような電気伝導特性の利用に向けては、適切な量子状態の構造を持つ物質の選択・設計、制御手法の確立が重要となる。

量子計量は、量子状態の構造を特徴づける基礎となる概念で、一般相対性理論の根幹をなす概念「計量」に類似した数学的構造を持つことからその名がつけられた。計量はブラックホールなどの強い重力が支配する宇宙の構造を表すもので、それにより光や天体の経路が曲げられることが観測により確かめられている。この類推で、電子の経路を変化させて非オーム的な電気伝導を創出するためには、「電子の宇宙」ともいえる量子計量の効果を測定し、さらにその形を制御する必要があるという。

しかし、物質中での量子計量を実験的に制御することはこれまで非常に困難だったという。その理由は、量子計量のもととなる量子状態の構造は、物質の結晶構造や化学組成などで決まり、基本的に物質固有であるためだ(2023年に海外で、極低温かつ高磁場にて、量子計量を磁気的に変調した実験結果が報告された)。特にデバイス応用の観点からは、量子計量を室温で低磁場にて制御することが求められるものの、そのような報告例は今までなかったという。そこで研究チームは今回、キラル反強磁性体のマンガン・スズ合金「Mn3Sn」と、白金の積層薄膜において、電子の量子計量を室温で低磁場による制御を試みることにしたとする。

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