大河原克行のNewsInsight 第303回 「テレビ撤退」という誤解、シャープのテレビ事業戦略を改めて追う
マイナビニュース / 2024年6月30日 16時47分
第10世代のマザーガラスで生産するSDPでは、70型、60型、42型で効率的にパネルを切り出すことができ、第8世代のマザーガラスを使用する亀山第2工場では、52型、46型、32型のパネルにおいて最適な生産が行える。
シャープ以外の液晶パネル生産を見ると、第10.5世代や、第8.5世代と呼ばれる生産拠点が、中国や韓国、台湾などで稼働しており、これらの拠点でも得意なサイズがある。たとえば、第10.5世代では75型、65型、8.5世代で55型、48型のパネル生産が得意だ。
シャープでは、2022年に投入した液晶テレビにおいては、SDPが得意とする70型、60型といったサイズをラインアップしていたが、2023年モデルや、今回、新たに発売した2024年モデルでは、70型、60型といったサイズがラインアップから消えており、75型や65型といったサイズが用意されている。シャープでは、2024年モデルの液晶パネルの調達先を明らかにはしていないが、SDP以外から液晶パネルを調達していることを裏づけるサイズ変更だといえるだろう。つまり、新製品では、SDPの生産停止を視野に入れたサイズ構成となっていることがわかる。これまで、SDPで生産した液晶パネルが占める比率は約2割であり、その部分が他社からの調達に置き換わるという計算だ。
なお、32型以下の中小型サイズでは、亀山第2工場で生産された液晶パネルを使用したテレビが一部ラインアップされており、シャープのテレビにおいて、国内生産の液晶パネルが使われたテレビが完全になくなるわけではない。
また、シャープでは、2020年以降、OLED(有機EL)テレビもラインアップしているが、シャープでは、テレビ向けOLEDの生産を行っておらず、これも海外パネルメーカーから調達していることになる。
さらに、シャープではかつて、テレビの組立を、亀山工場や矢板工場で行っていたが、現在では、国内向けテレビの組立は、大画面モデルは中国・南京の同社工場で行われており、中小型モデルはマレーシアの工場で組立が行われている。
「AQUOS」の差異化、「パネル以外」の存在感が増した
液晶パネルを外部から調達することで、シャープのAQUOSの特徴が薄れるのではないかとの見方もある。
だが、これに対して、シャープの岡本本部長は、「いまは、競争軸が大きく異なっている。液晶パネルというデバイスそのものでの差別化は難しくなっている」と語る。
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