大河原克行のNewsInsight 第303回 「テレビ撤退」という誤解、シャープのテレビ事業戦略を改めて追う
マイナビニュース / 2024年6月30日 16時47分
「次世代ディスプレイのnano LEDは重要な技術だと捉えており、この開発は続ける。また、車載向けディスプレイの開発も進めることになる」と、呉副会長は語る。
実は、ブラウン管時代に、独自の技術のトリニトロンによって、圧倒的な優位性を発揮したソニーは、液晶テレビにおいては、外部からの調達にいち早く移行し、テレビ事業を継続している。当初は、サムスンと液晶パネル生産の合弁会社を設立したり、シャープのSDPへの出資を検討したり、自社生産のパネル調達に動こうとした時期もあったが、それも途中で方針転換した。
だが、ソニーは、液晶パネルは外部から調達しても、画像信号処理技術やバックライト制御技術で画質に違いをみせたり、音響技術で差異化したり、Android TV(現在はGoogle TV)をいち早く搭載することで操作性を高めたりといったことを行ってきた。ソニー独自の画像処理エンジンやAIプロセッシングユニットにより、ソニーならではの画質で差別化しているという実績を持つ。液晶パネルを外部調達しても差異化ができることは、すでにソニーが証明済みだ。
テレビのシェア拡大へ、「AQUOS」の価値の源泉を変える
では、今後、シャープのテレビは、どこに差異化を求めるのだろうか。
シャープ TVシステム事業本部国内TV事業部副事業部長の上杉俊介氏は、「2024年6月から発売したAQUOSは、シャープ独自の技術によって、パネル性能を引き出しているのに加え、次世代AIプロセッサーを採用した画像処理エンジンによって、映像と音を新たな次元に引き上げて、届けることができる」と自信をみせる。
たとえば、4K mini LEDテレビに搭載した画像処理エンジン「Medalist S5X」は、AIオート機能により、コンテンツに応じて、画質と音質を、おまかせで自動調整。画質では、AIが人の顔や空などのオブジェクトを検知して、色味や精細感を調整することができる。新たな機能では、AIを活用して精細感を高める「AI超解像」と、アニメやネット動画などに発生しやすいグラデーションの乱れをなめらかに補正し、スッキリした映像にする「アニメ・ネットクリア」を搭載した。
また、音質では、AIが音声信号を解析して、音楽ライブやスポーツ視聴時の臨場感を高め、合間のセリフや解説中は声を明瞭にして聞き取りやすくするなど、シーンに適した調整を自動で行うという。
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