ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」、帰還が大幅遅れ - いったいなぜ?
マイナビニュース / 2024年8月10日 7時32分
NASAとボーイングは対処にあたり、ひとまず解決のめどが立ったことでミッションは続行され、6月7日にISSへのドッキングに成功した。
しかし、ドッキング後、さらにヘリウム漏れの箇所が増え、また、スラスターの問題も完全な原因の特定には至らなかった。なお、ヘリウム漏れとスラスターの問題との間には、直接の関係はなく、それぞれ独立した問題であると考えられている。
このため、NASAとボーイングは原因究明や対応策の検討をさらに進めるとし、当初8日間の予定だったミッションも延長され、帰還は6月中旬になるとされた。
その後、ISSにドッキング中のスターライナーのスラスターを噴射する試験が行われるなどし、問題の調査が進められたが、6月18日には帰還の目標日を6月下旬へ延期することが発表された。このとき、NASAの担当者は、「スターライナーが2人の宇宙飛行士を乗せて帰還できることに自信を持っている」と語ったが、その後も調査は終わらず、さらに帰還は先延ばしされることになった。
当初は8日間、また長くとも45日間が予定されていたミッションだが、7月が過ぎ、そして打ち上げから約2か月が経過したいまなお、NASAとボーイングは具体的な帰還の目標日さえ発表していない状況となっている。
これまでにわかっていること
こうした中、NASAとボーイングは長らく、楽観的な姿勢を崩していなかった。
ヘリウム漏れについては、根本的な原因の究明には至っていないものの、漏れる率は低下していると説明された。また、宇宙船のタンクには、帰還時に必要な量の約10倍のヘリウムが残っており、漏れ率から考えて、帰還に影響はないという。
スラスターの問題についても、同じく根本的な原因の究明には至っていないが、ドッキング前に問題が起きた5基のスラスターのうち4基は正常に作動するようになり、ISSからの離脱や地球帰還には支障がないことが確認できたとされた。
両者は、ヘリウム漏れとスラスターの問題は、宇宙飛行士を危険にさらすものではなく、帰還にも影響はないとしたうえで、今回は飛行試験ミッションであることもあり、徹底した試験とレビューをしたうえで、帰還計画を立てたいとし、それゆえに帰還日が決まっていないだけなのだ、と主張した。
この主張の背景には、宇宙船の構造上の理由がある。スターライナーは、人が乗るクルー・モジュールと、太陽電池やスラスター、バッテリーなどが搭載されているサービス・モジュールの、大きく2つの部分に分かれており、スラスターはその両方の各所に装備されている。問題が起きているヘリウムのシステムとスラスターは、サービス・モジュールのほうに装備されているものだ。
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