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ボーイングの新型宇宙船「スターライナー」、帰還が大幅遅れ - いったいなぜ?

マイナビニュース / 2024年8月10日 7時32分

また、今回の問題の解決が長引く可能性もあり、原因究明が終わっても、改修や追加の試験などに時間がかかる可能性もある。さらに、これまでの度重なる開発の遅延や、飛行試験で問題が相次いでいることを鑑みると、また別の未知の問題が潜んでいる可能性も否定できないだろう。

今後、スターライナーの運用計画、ボーイングの財政、ひいてはISSの運用計画全体に、さらなる影響が及ぶことも考えられる。

また、これまでの遅延により、開発費も膨れ上がっており、ボーイングの業績に影響を与えている。CCDevプログラムは固定価格契約であり、NASAからは規定の金額が支払われるのみで、足らない分、つまりコストが超過した分はボーイングが自ら負担しなければならない。運用段階に入れば、NASAからISSへの宇宙飛行士の輸送に対して運賃が支払われ、利益が生まれるが、開発が終わらない限り、それも見込めない。最悪の場合、ボーイングが企業判断として、スターライナーの事業から撤退する可能性もありうるだろう。

もっとも、忘れてはならないのは、宇宙開発、とりわけ人が乗る有人宇宙船の開発は、きわめて難しいものであるということである。とくに、米国にとって新たな宇宙船の開発は数十年ぶりであり、民間企業が主体となって進めるというまったく新しい要素もあった。その挑戦の意義が失われることはない。

そのうえで、これまでのNASAとボーイングの行動には大きな疑問が残る。問題の調査、対処、復旧作業にあまりにも時間がかかりすぎており、一般・メディアに対する説明も不十分かつ首尾一貫していない。なにより、これまでの開発や無人での飛行試験などで起きた問題に対する原因究明のプロセス、再試験のプロセス、試験後の認定や飛行許可のプロセスにも、はたして正しく行われたのかどうかという疑問が残る。

有人宇宙飛行において最も重要なのは安全、すなわち宇宙飛行士の命である。米国はこれまでも、いくつもの過ちを犯してきた。今回のスターライナーのミッションや、今後のISSの運用がどうなるにせよ、宇宙飛行士が安全に地球に帰還できることを願いたい。

○参考文献

・Starliner Updates
・NASA's Boeing Crew Flight Test - NASA
・NASA likely to significantly delay the launch of Crew 9 due to Starliner issues | Ars Technica
・NASA, Boeing Complete Second Docked Starliner Hot Fire Test - Space Station

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら
(鳥嶋真也)



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