日本の建設産業、これまでとこれから
マイナビニュース / 2024年9月18日 10時0分
一方で、新しい花形産業が台頭しました。特に90年代前後からITの発達と浸透によって、システム開発やソフトウェア開発、ウェブサービスといった新規の成長産業が多く生まれた。ITエンジニアやウェブデザイナーといった新しい職業も続々と登場しました。グローバル化によって商社や金融といった業界にもスポットが当たるようになりました。
ひるがえって、建設産業を見ると、入札談合などの悪しき商慣習がマスコミに指摘され、激しく叩かれ始めました。こうした外部環境から見ても、建設産業の人気が落ちていったのは致し方ないのだろうなと思います。
野原: 建設現場の環境、特に専門工事を取り巻く環境は、大きく変わっていきましたよね。
蟹澤: 高度経済成長期(1955~1973年)になって、建設現場に重機が入ってきたことは大きな変化でした。肉体を酷使する必要性はなくなり、生産性は大幅に上がりました。
しかし、現場の大きな付加価値のひとつだった「体」を使う仕事が機械に置き換えられたわけですから、職業としての「付加価値が下がった」とも言えます。
野原: この期間には、図面を読み取って、現場で部材を加工するなどの知識や頭脳を必要とする仕事についても減ってしまった印象があります。
蟹澤: その通りです。かつてゼネコンは直接、一部の建設労働者を雇用していました。今も多くの国がそうなのですが、日本は優れた建設労働者が育っていたので、彼らが独立して下請けとして働き始めたのです。
元請けと下請けでは、一種の主従関係になり、下請けの利益は少しずつ減りました。また下請け化が進んだことによって建設現場は急速に分業による効率化が進みました。資材をあらかじめ組み立てておくモジュール化が進み、図面を読み取って現場で加工するような「余白」のような仕事がどんどんなくなった。最後に残ったのは、現場に届いた半完成品をビスで留めるとか、釘を打つといった組み立て作業くらいになってしまいました。
創意工夫の部分、それはものづくりの最も楽しい部分でもあると思いますが、まるごと削り取られてしまったわけです。機械化や分業化で現場の生産性は上がりますが、現場で働く人のものをつくる面白さというか、やりがいは減っていってしまったのかもしれません。
この「やりがいの喪失」も業界の人気を衰退させた大きな要因のひとつでしょう。野原さんが指摘されたように、建設産業は人材不足が極めて深刻です。建設技能者の数は、2045年には2020年の半分に減り、「2045年問題」と言われます。
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