建設DXで未来を変えていく
マイナビニュース / 2024年9月30日 10時0分
野原: スマートシティ(※3)がまさにその形ですよね。省庁をまたいで行われるプロジェクトではありますが、大部分を主導しているのは自治体の首長です。すでに自治体から新しいことを始める前例ができていますので、BIMを地方から広めていくのも現実的な発想だと思いました。
※3 スマートシティ:IT技術やデータを活用したマネジメントにより、人々により良いサービスや生活の質を提供できる都市または地域
岸: 実のところ、地方自治体の首長の多くは政府以上に改革派が少ないんです。本来は地方自治体と国は対等な立場であるべきなのですが、未だに総務省が地方交付税で自治体を縛っていますから。こうした大本営が作った方針を忠実に守る自治体、首長さんも相当に多い。
とはいえ、その中でも改革を目指す首長は必ずいます。そういう方と地元を巻き込んで成功例を作れば、自分たちもやりたいと言い出す自治体は必ず出てきます。
●「学」の使い方が、分水嶺になりえる
野原: 岸先生は慶應義塾大学大学院教授というお立場にもあります。先ほどは産業と官公庁、いわゆる産官の共創についての話がありましたが、「学」との連携にはどのような可能性があるとお考えでしょうか。
岸: とても大きな可能性がありますね。うちの大学院のゼミでは机上の研究成果を論文にまとめるだけでなく、産学官のプロジェクトで行った実験や得られたデータを基に学生が論文を書くというアプローチを取っています。私のライフワーク的な部分も含んでいますが、地域経済活性化の新しいモデル作りに産学官で取り組んでおり、地域企業も巻き込んでプロジェクトを進めています。
その経験を踏まえ、建設産業こそ産学官の形で新しいプロジェクトに取り組むべき産業だと言えます。
野原: 建設産業はもっと学を活用すべきであると。
岸: その通りです。特に地方で何か新しいことをやるときこそ、大学の名前を使うべきだと思います。先ほど地方の首長さんは保守的な方が多いとお話ししましたが、民間も保守的になりがちな傾向があります。ですので、産官だけで何かをやろうとしても話が進まないケースは珍しくないのですが、ここに大学が入ることでチャレンジへのハードルを一気に下げられるのです。民間企業がビジネスで新しいことをやろうとするのと、大学の先端的な実験に協力するのとでは若干毛色が変わりますので、抵抗が少なくなるのでしょう。
ちなみに、産学官をそろえたからといって、必ずしも大学が新しい知見を提供する必要はないと考えています。もし建設産業がBIMの導入を進めるための実験をしたいと考えるなら、大学の実験という体裁をとりながら導入を進めるだけでも意味はあると思います。産学官のプロジェクトにする意味がないと思われるかもしれませんが、それで新しいことにチャレンジできるなら、結果的には悪くないのではないでしょうか。
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