建設DXで未来を変えていく
マイナビニュース / 2024年9月30日 10時0分
ところが、フタを開けてみると、タクシー業界の強い反発を受けて、世界では当たり前の形でのライドシェアの導入は見送られました。タクシー会社が一種免許のドライバーを雇用できるようになるという、ほとんどライドシェアとは言えないような解禁にとどまったのです。
野原: なぜ国土交通省は、ライドシェアの社会実装に及び腰なのでしょうか?
岸: ライドシェアの導入には道路運送法などの根本的な法の見直しが必要になります。今ある制度を大きく変えることを、役所は嫌がりますからね。
加えて、ライドシェアによってシェアをとられることを嫌がるタクシー業界がライドシェアの抵抗勢力として現れれば、なおさら及び腰になります。もっとも、変化を好まない風潮はどの省庁も同じです。
厚生労働省で言えば、社会保障制度や年金制度の問題がありますよね。今のままではどう考えても制度を維持できないと分かっているのに、抜本的な改正は大変だから毎年帳尻合わせをして終わってしまう。
野原: おっしゃる通りですね。とはいえ、産業側の「必要だから」「便利だから」という理由だけでは、デジタル技術の社会実装には時間がかかるように思います。
岸: 個人的には、国や官公庁ではなく、まず地方自治体と組んで成功例を作ってしまうのがいいと思います。例えば、建設産業の人材不足やそれに伴った地域経済の縮小に問題意識を持っている自治体の首長さんと組む。そこで実証実験と称してBIMを地元のゼネコンや施工会社に使ってもらう。そして「BIMを活用して工期が短縮できました」「コストが安く済みました」「地元の建設会社さんにも多くのメリットがありました」という形で成功例を作るのです。
国や中央省庁は、やはり管轄が大きいだけに、変わることのコスト、デメリットのほうが大きすぎるのは確かです。しかし、地方自治体ならば小さく実験的に新しい試みができる。相対的に規模が小さいため、チャレンジングな施策が打ちやすい。
野原: なるほど。しかも、首長は選挙で選ばれた人ですから、トップダウンで意見も通しやすいですからね。
岸: そうなんです。そして先にBIMを使った結果が、大幅なコスト削減や地域の活性化につながれば、他の自治体もぜひ使ってみたいと考えるはず。そして大きなムーブメントになれば、国や省庁も無視できません。法律を簡単に変えられるかは別として、助成金など予算面の応援は期待できます。
政策の面でこうした取り組みを制度的にできる仕組みが、「国家戦略特区」です。地域限定で規制を緩和し、企業と組んで具体的な成果を出し、それを全国に広めていく。こうした国家戦略特区的なアプローチを、改革意欲がある首長さんと組んで試していくのがいいと思います。
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