欧州の小型ロケット「ヴェガ」、最後の打ち上げ - 波瀾万丈の歩みとその未来
マイナビニュース / 2024年10月1日 12時33分
もっとも、欧州のロケットの常であるように、フランスやスペインなど、他のESA加盟国も出資やコンポーネントの供給で参画している。また、第4段の液体ロケット段に装備するロケットエンジンは、ウクライナのユージュマシュが製造し、供給している。販売や運用も、フランスに拠点を置くアリアンスペースが担当した。
順調な船出と、つまずき
ヴェガの開発は2003年に正式にスタートした。古今東西のロケットの例に漏れず、開発は遅れたものの、2012年2月13日に初めての打ち上げを迎え、無事に成功を収めた。
以来、今回の最後の打ち上げまでに、12年間で22機が打ち上げられ、20機が成功した。ただし、そのうち1機はサブオービタルへの打ち上げだったため、衛星打ち上げに限ると21機中19機となる。
この数字――12年で22機という打ち上げ数はやや少ない。なにより、打ち上げ成功率約91%という数字も、現代のロケットとしては低い。
最初の失敗は 2019年7月17日、15号機(VV15)の打ち上げで起き、第2段ロケットモーターが燃焼中に爆発した。その後の調査で、モーターに構造上の問題があったことが原因とされている。
約1年後の2020年9月3日には、16号機(VV16)の打ち上げ成功により運用を再開したものの、同年11月17日の17号機(VV17)の打ち上げでふたたび失敗を喫した。このときは、第4段AVUM のケーブルが誤って接続されていたことが原因とされる。
また、商業打ち上げ市場でも苦戦を強いられた。低価格なロシアのロケットに対抗できるほどの打ち上げ価格にはできず、高価格でも顧客が納得できるほどの付加価値――信頼性など――も提供できなかった。また、ロシア製ロケットは次第に市場から撤退したものの、スペースXの「ファルコン9」ロケットによる小型衛星の相乗り打ち上げサービスが人気を博したことで、ここでも優位に立つことはできなかった。
このため、ESAやフランス国立宇宙研究センター(CNES)、ASIといった、官需の衛星打ち上げミッションが多くなった。もっとも、今回のセンチネル2Cの打ち上げのように、欧州の地球観測プログラム「コペルニクス」を支えるなど、欧州における小型衛星の打ち上げの自立性を維持するという点では十分な実績を残した。
前述のように、かつて欧州はロシアのロケットを数多く利用していたが、2010年代以降、ロシアのロケットは信頼性や打ち上げスケジュールの確実性が大きく崩れ、また2014年のクリミア併合、そしてなにより2022年のウクライナ侵攻によって、使用することもできなくなった。ヴェガがなければ、欧州の宇宙開発は大きな影響を受けていただろう。
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