欧州の小型ロケット「ヴェガ」、最後の打ち上げ - 波瀾万丈の歩みとその未来
マイナビニュース / 2024年10月1日 12時33分
●喫緊の課題は信頼性の回復 - さらにフランスからの刺客、そしてヴェガ・ネクスト
ヴェガC、ヴェガE
ヴェガの運用は終わったものの、アヴィオはすでに後継機の「ヴェガC」を開発、製造しており、アリアンスペースによる運用が始まっている。
ヴェガCはヴェガをベースに、第1段や第2段の固体モーターを改良、大型化するなどし、打ち上げ能力が向上している。また、先ごろ初打ち上げに成功した大型ロケット「アリアン6」との部品の共通化により、シナジー効果によるコストダウンも図っている。これによりヴェガよりも打ち上げ能力が向上しながら、打ち上げコストは据え置きとなっており、コストパフォーマンスが向上している。
ただ、2022年7月13日の初打ち上げこそ成功したものの、同年12月21日には初の実運用かつ商業打ち上げとなる2号機の打ち上げが失敗に終わった。その後の調査で、第2段の固体モーターのノズルに欠陥があったことが判明した。さらに2023年には、改修した第2段モーターの地上燃焼試験に失敗したこともあり、現在まで2年近くにわたって打ち上げは中断している。
そもそも、先代のヴェガも2019年と2020年に相次いで失敗したことを踏まえると、信頼性の低下が深刻なレベルにあることは否めない。
また、ヴェガCの第4段「AVUM+」にも、ウクライナ製のロケットエンジンが使われている。ESAは「すでに(侵攻前に)イタリアへ送られたエンジンのストックが十分にあるため、中期的には問題ない」としているが、戦争が長引いたり、ウクライナの工場が被害を受けたりすれば、いずれはエンジンの在庫がなくなり、打ち上げができなくなる事態も考えられる。
こうした中、ESAやアヴィオは、ヴェガCのさらに後継機となる「ヴェガE」の開発を進めている。
ヴェガEは、ヴェガCの第3段と、ウクライナ製エンジンを使う第4段を、新型の上段に丸々置き換える。この新型上段には、液体酸素と液化メタンを推進剤に使う新開発の「E10」エンジンを搭載する。ヴェガCの第4段AVUM+では、非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)と四酸化二窒素(N2O4)を使用していたが、液体酸素とメタンにすることで性能が向上し、環境にも優しくなる。名前のEは「Evolution(進化)」から取られており、初期型のヴェガはもちろん、ヴェガCからも大幅な進化を遂げるということが示されている。
ヴェガEの初打ち上げは2026年に予定されている。
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