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欧州の小型ロケット「ヴェガ」、最後の打ち上げ - 波瀾万丈の歩みとその未来

マイナビニュース / 2024年10月1日 12時33分

ヴェガの未来

ヴェガが引退し、ヴェガCの飛行再開を控えたアヴィオとアリアンスペースにとって、目下の課題はヴェガの信頼性回復にある。ヴェガが2機、ヴェガCも1機が、それもここ数年の間に相次いで失敗したことは一大事であり、今後の欧州の宇宙輸送の自立性を維持し続けるためにも、また商業打ち上げを獲得するためにも、早期の飛行再開と、成功を積み重ねることが求められる。

こうした中で、とくにイタリアにとっては、ヴェガというロケットが存続できるかどうかという危機にも瀕している。ESAは最近、民間のベンチャー企業による小型・超小型ロケットの開発支援に力を入れており、フランスやドイツ、英国、スペインなどから、数多くのベンチャーが立ち上がっている。

たとえば、フランスの「マイアスペース(Maia Space)」が開発中の「マイア」ロケットは、バイオメタンと液体酸素を推進剤とするロケットで、太陽同期軌道に1.5tの打ち上げ能力をもつ。すなわち、ヴェガCと直接競合する性能である。

2025年にも試験打ち上げを行い、2026年からの商業打ち上げの開始を目指している。また、打ち上げ能力は落ちるものの、第1段機体の回収、再使用も視野に入れている。

そして何を隠そう、マイアスペースは、アリアングループの100%子会社であり、そもそもフランス国立宇宙研究センターとアリアングループとの共同研究から始まったベンチャー企業でもある。さらに、マイアには、CNESとアリアングループが開発中の再使用ロケット実証機「テミス」と、それに使用される「プロメテウス」ロケットエンジンの技術が使われることになっている。

こうした、ある意味ではフランスからの三行半とも取れる動きに対し、アヴィオも対抗策を打っている。2023年11月にはESA閣僚理事会において、アヴィオが将来的にアリアンスペースから離れ、自社のみでヴェガCの販売、打ち上げを可能にする決議が採択された。これにより、2025年に予定されているヴェガ29号機の打ち上げまではアリアンスペースが関与するものの、その後の打ち上げからは、アヴィオが自由に、すべてを手がけることになる。

また、2022年には、2030年代ごろの実現を目指した、「ヴェガ・ネクスト」というロケットの開発構想を明らかにした。ヴェガEの技術を踏まえて、全段にメタン・エンジンを使うとともに、再使用型ロケットにもするという。もともとのヴェガの面影はまったくなくなり、米国のスペースXのロケットや、前述したマイアのような、最新の技術トレンドを最大限に取り入れた、野心的なロケットである。

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