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欧州の宇宙開発、新章へ - アリアンスペースが語るロケットと市場の未来

マイナビニュース / 2024年10月18日 17時59分

この使い捨ての場合の、太陽同期軌道に1500kgという打ち上げ能力は、ヴェガCとほぼ同じである。実は、ヴェガCは2025年に予定されているVV29ミッションの打ち上げまではアリアンスペースが運用するものの、その後の打ち上げからは、ヴェガのプライム・コントラクターであるアヴィオが、運用や販売も含めてすべてを手がけることが決まっている。

つまり、アリアンスペースのラインアップからヴェガCがなくなるため、マイアはその後継機、代替機という位置付けになる。

このマイアの実現を左右する鍵となるのが、「プロメテウス」ロケットエンジンである。

プロメテウスは、ESAとアリアングループが開発中の再使用型エンジンで、天然ガスを主成分とするバイオメタンと液体酸素を推進剤に使う。推力は100tf級で、また再使用のためスロットリングも可能で、何回も着火できる能力ももつ。

製造には、積層造形(いわゆる3Dプリント)技術を広範囲に採用し、部品数や製造時に出る廃棄物の削減、生産の高速化などを狙っている。また、最初にコスト目標を決め、製品の開発設計段階のすべてを通じて、コストがその目標内に収まるようコントロールしていく製品開発管理法「デザイン・トゥ・コスト(Design To Cost)」アプローチを採用する。こうした取り組みにより、「アリアン5」に使われていた第1段メインエンジン「ヴァルカン2」より、コストを10分の1に削減することを目指している。

2022年11月には試作エンジンが初めて始動し、2023年6月には再使用ロケット実証機「テミス」の機体(タンク)と組み合わせた状態での、初のエンジン点火、燃焼試験が行われた。エンジンは計画どおり12秒間燃焼し、試験は無事成功したという。現在も、燃焼試験などが続いている。

プロメテウスについて、イズラエル氏は「まずはマイアで使用するが、アリアン6の次のロケットで採用される可能性もある」とし、いわゆる「アリアン・ネクスト」で使用する可能性を示唆した。

加えて、「さまざまな用途にでき、活用されていくことになる。引き合いがあれば、外部にも販売したい」とし、エンジン単体での販売にも意欲を見せた。また、髙松氏は、「日本のベンチャー企業が買ってくれることに期待したい」と語った。

ついにアリアン6がデビューし、ヴェガCの打ち上げ再開も近づき、そして新たな再使用ロケットの開発も始まるなど、欧州のロケットの新たな章が幕を開けた。その動きは日本にとっても無関係ではない。これからの動きに注目したい。

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら
(鳥嶋真也)



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