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ガリレオの夢を継いで - 木星衛星の海に挑む探査機「エウロパ・クリッパー」

マイナビニュース / 2024年11月16日 7時0分

そして、木星の強い重力と他のガリレオ衛星との相互作用により、エウロパは内外から引っ張られ、形状がわずかに変形している。この変形によって熱が生まれ、適度な温度が維持され、液体の水が存在するとともに、代謝活動の維持や化学合成の促進に必要なエネルギー源にもなると考えられている。

また、エウロパの地表は流動しており、そして間欠泉のような地下と地表とをつなぐ活動もある。もし、小惑星や彗星などから有機物がもたらされれば、それが地下の海へ送られ、生命誕生のきっかけとなったり、生きながらえるのに必要な環境を維持し続けるのに役立ったりしているかもしれない。

もちろん、人や魚のような生命体は難しいだろうが、地球の深海の熱水噴出孔のまわりで生きている始原的な微生物のような生命ならいるかもしれない。

さらに、もしなんらかの生命体が存在しているならば、間欠泉によってその痕跡や、生命そのものが吹き上げられている可能性すらあり、海に潜ることなく、生命の有無を調べることもできる。

エウロパ探査の難しさ

しかし、それほどエウロパが注目されつつも、直接探査する計画はなかなか実現しなかった。

その理由には、まず木星圏が非常に遠いということがある。探査機を木星圏まで飛ばすには莫大なエネルギーが必要で、開発費や打ち上げ費も莫大なものになる。これまでの宇宙開発の歴史上、木星圏を探査したものは9機しかなく、いかに難しいかが現れている。

そして、エウロパの探査の場合には、さらに輪を掛けて難しくなる。エウロパは、木星の磁場がつくる放射線帯の中を公転しているため、探査機もその中を飛ばなければならない。強い放射線の中でも動くコンピューターや観測機器の開発は難しく、大きな障壁となっていた。

さらに、地表を覆う氷の厚さは推定10~40kmとはっきりしていないうえに、推定値でもかなり厚く、さらにその下の海の深さもわかっていない。そのため、どういう観測機器を積めば、十分な科学的成果が得られるのかという検討や、そのための装置の開発も難しかった。

エウロパを探査しようという構想は、前述した探査機ガリレオの成果を受けた、2000年代から本格化した。NASAは当初、原子炉を搭載した「JIMO (Jupiter Icy Moons Orbiter)」という野心的な計画を立ち上げたものの、技術的、コスト的な理由から中止となった。

次に、欧州宇宙機関(ESA)と共同で、大型の探査機「EJSM (Europa Jupiter System Mission)」を造る計画が立ち上がったものの、これも中止となった。ただ、ESAはその後、自分たちの担当箇所だけを開発継続し、「ガニメデ」を探査する木星氷衛星探査計画「JUICE」を造り上げ、2023年に打ち上げている。

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