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ガリレオの夢を継いで - 木星衛星の海に挑む探査機「エウロパ・クリッパー」

マイナビニュース / 2024年11月16日 7時0分

ファルコン・ヘヴィは、現役の実用ロケットの中では世界で最も強力な打ち上げ能力をもつが、それでもエウロパ・クリッパーの打ち上げは簡単ではない。多くの場合、ファルコン・ヘヴィの打ち上げでは、第1段やブースターを再使用するために回収するが、今回は回収せず推進薬がなくなるまで飛行したうえに、さらに着陸脚なども取り外して軽量化するという徹底ぶりだった。ファルコン・ヘヴィが本来もっている打ち上げ能力を振り絞って、やっと打ち上げられたのである。

さらに、それでも直接木星圏へ向かう軌道に投入することはできず、エウロパ・クリッパーはまず2025年3月に火星をスイングバイし、続いて2026年12月に地球をスイングバイして、ようやく木星へ向かう軌道に入る。

木星への到着は2030年4月の予定で、エンジンを噴射して減速し、木星を回る楕円軌道に入る。前述のように、エウロパは木星の放射線帯の中を公転しているため、探査機をエウロパの周回軌道に入れて運用することは難しい。そこで、木星のまわりを回りつつ、エウロパの近くを何回も通過できるように設計された軌道を飛ぶことで、放射線の影響を最小限に抑えるようになっている。

エウロパへの最初のフライバイは2031年3月の予定で、運用を終える2034年までに、合計49回のフライバイが計画されている。この中で、探査機はエウロパの地表から約25kmまで接近する予定となっている。

エウロパの氷の下には、まだ誰も知らない物語が眠っている。それが紐解かれるとき、私たちは宇宙の神秘に一歩近づき、そして「この宇宙で人類はひとりぼっちなのか?」という疑問のヒントが得られるかもしれない。私たちの果てしない好奇心と未来への希望を乗せ、エウロパ・クリッパーの壮大な航海が始まった。

○参考文献

・Liftoff! NASA’s Europa Clipper Sails Toward Ocean Moon of Jupiter - NASA
・8 Things to Know About NASA’s Mission to an Ocean Moon of Jupiter | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)
・Overview | Mission - NASA's Europa Clipper
・Instruments | Spacecraft - NASA's Europa Clipper
・Ingrid Daubar, 2024, "Europa Clipper: 5 Months to Launch!", Astrobiology Science Conferences (AbSciCon) 2024, JPL Open Repository

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら
(鳥嶋真也)



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