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ガリレオの夢を継いで - 木星衛星の海に挑む探査機「エウロパ・クリッパー」

マイナビニュース / 2024年11月16日 7時0分

その後もNASAは、実現の可能性を探り続け、その結果徐々にシンプルな構想になっていった。まず、エウロパの周回軌道には入らず、エウロパに何回か接近できる木星周回軌道に入るようにすることで、必要な燃料と放射線防護に必要なシステムを減らした。また、発電も原子炉や放射性同位体熱電気転換器(RTG)から太陽電池になった。さらに、当初はエウロパに着陸する着陸機も一緒に送り込む計画だったが、搭載しないことになった。

ときには政治家も巻き込んで、政権とのコストをめぐる駆け引きを繰り広げた結果、2015年5月にミッションが正式に決定した。それが「エウロパ・クリッパー(Europa Clipper)」である。

●エウロパ・クリッパーの使命と、未知への挑戦
エウロパ・クリッパー

エウロパ・クリッパーは、NASAのフラッグシップ・ミッションとして立ち上げられた。その名のとおり、最も大規模な科学ミッションで、米国の科学コミュニティによって行われる十年おきの調査「ディケーダル・サーヴェイ」に基づいて計画化される。つまり、NASAのみならず、米国の科学コミュニティ、ひいては米国そのものを代表、象徴するミッションである。

計画はNASAジェット推進研究所(JPL)が主導する。ミッション全体の費用は約52億ドルに達するとされる。

探査機の本体の寸法は3.0m×4.7m×3.0mで、太陽光が弱くなる木星圏で運用するため、長さ30.5mもの大きな太陽電池パドルを装備している。打ち上げ時の質量は約6tで、これまでにNASAが開発した中で最も大きく、重い惑星探査機である。

本体はまた、円筒形の部分と、四角い箱のような部分と大きく2つに分かれている。このうち、円筒形の部分には主に推進薬タンクとエンジン、太陽電池パドルなどが取り付けられている。一方の箱の部分には電子機器が入っている。この箱は、厚さ約9mmのアルミニウムと亜鉛の合金で作られており、放射線から中の電子機器を守るようにできている。

エウロパ・クリッパーのいちばんの目的は、エウロパに生命を育む環境があるかどうかを調べることにある。その成果は、太陽系内だけでなく、太陽系外の数十億の天体に生命が存在する可能性があるかどうかを、より深く理解するのに役立つ。

この目的のため、探査機には9つの観測機器を搭載し、エウロパの氷の大地の厚さを調べること、その下にある海との相互作用を調べること、エウロパの組成を調べること、そしてエウロパの地質を特徴づけることを目指している。

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