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変革の軌跡~NECが歩んだ125年 第9回 TK-80とBit-INNとPC-8001、日本のパソコンの夜明け

マイナビニュース / 2025年1月14日 12時0分

TK-80は、発売からわずか2年間で、約6万6000台を販売する大ヒットとなり、NECはマイコン時代の主役に一気に躍り出たのである。
常識破りが切り拓いていった日本パソコン市場

TK-80では、それまでの常識を覆す取り組みがいくつも行われた。

そのなかでも、特筆されるのは、Bit-INNなどを通じて、技術情報を積極的に公開したことだ。当時のハードウェアメーカーの常識は、技術情報はメーカーにとって根幹部分であり、情報が流出すれば、他社に真似される温床になりかねないと判断されていた。だが、TK-80では、配線図や使用部品などの諸元についても公開し、これを見た企業がTK-80向けの周辺機器やソフトウェアを開発。それが結果として、TK-80の販売を加速することになるという好循環を生むことになったのだ。

TK-80の販売が軌道に乗り始めたころ、NEC社内の別部門の社員が、TK-80のカラー写真が掲載されたエレクトロニクス専門誌に広告を見て、「これは、あなたたちが出したものなのか」と渡邊氏に聞きにやってきた。広告を出した覚えがない渡邊氏は、それを否定したところ、今度は、「ほかの会社が、TK-80の宣伝をするはずはない」と言い出した。その広告を見ると、TK-80向け電源装置を開発したサードパーティーが出稿したものであることがわかった。TK-80は、本体とは別に電源装置を購入しなくてはならず、そうしたニーズにあわせて開発した製品であり、その広告にTK-80の写真が大きく掲載されていたのだ。社員は、「TK-80の写真を無断で掲載してもいいのか。先方にクレームをつけた方がいいのではないか」と提案したが、渡邊氏はそれも否定した。

「お礼こそ言え、クレームなんてありえない」。渡邊氏はそう答えて、サードパーティー製品の広がりを支持したのだ。

これが、NECのパソコン事業における最初のサードパーティー製品となった。

その後、TK-80向けのサードパーティー製品が各社から登場。この手法は、その後のPC-8000シリーズやPC-9800シリーズでも踏襲され、それが、NECを国内パソコン市場でトップシェアに押し上げる原動力となった。当時のパソコンは、メーカーごとに対応するソフトウェアや周辺機器が異なっており、これらの製品の品揃えが増えることは、ユーザーの利便性と、用途の広がりにつながり、シェア拡大という観点からも重要な要素だったのだ。
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