変革の軌跡~NECが歩んだ125年 第10回 国民機「PC-9801」誕生、栄華を極めた国産パソコンと迫るDOS/V時代
マイナビニュース / 2025年1月21日 12時0分
さらにNECは、大胆な行動に打って出た。PC-9801の出荷開始の1~2カ月前に、約50社のソフトウェアメーカーに試作機を提供。サードパーティー製アプリケーションソフトの品揃えに力を注いだのである。その結果、1983年3月には200本、1984年3月には600本という圧倒的な数のソフトを取り揃え、その点では他社の追随を一切許さなかった。
初代のPC-9801は、インテルのi8086互換であるμPD8086(クロック周波数5MHz)をCPUに採用し、128KBのメモリを内蔵。カラーグラフィック表示機能も特徴のひとつだった。価格は29万8000円。オプションとしてJISの第一水準をカバーする漢字ROMが用意されていた。
年間の販売目標台数は7万台という意欲的なものであったが、発売1カ月間で受注台数は1万台を突破。発売から半年後の1983年3月には5万台に達し、好調な滑り出しをみせた。
さらに、マイクロソフトのMS-DOSをアプリケーションソフトとともにフロッピーディスクに組み込むバンドリング戦略を推進。1983年10月には、MS-DOSをバンドルし、FDD(フロッピーディスクドライブ)とJIS第一水準漢字ROMを標準搭載したPC-9801Fを発売し、さらに事業を加速。1987年3月には、PC-9800シリーズの累計出荷台数が100万台を突破したのだ。
このように、順調に事業を拡大していったNECのパソコン事業だが、実は、内部では不協和音が生まれ始めていた。
情報処理事業グループ、電子デバイス事業グループ、新日本電気という3つの部門が、それぞれにパソコンを開発、販売する体制は、守備範囲が異なることから、NECのパソコン事業全体を活性化させることにつながったものの、その一方で、組織間の対抗意識からお互いに反目しあう空気が生まれはじめ、経営層は、パソコン事業を組織的に再編する時期がきたと判断しはじめたのである。
NECは、1983年12月に、電子デバイス事業グループが担っていた8ビットパソコン事業も日本電気ホームエレクトロニクスに移管し、ホームエレクトロニクスという観点から、8ビットパソコンを定義しなおした。
この背景には、電子デバイスグループがパソコン事業を開始した理由が、半導体を売るための手段であったことが起因している。「手段が目的となるという主客転倒ではいけない。いま、電子デバイスグループがパソコン事業から手を引くのが筋だ」と、デバイス事業を率いてきた大内淳義副社長(のちに会長)が大局的な視点で判断したものだった。
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