家族が認知症になりまして 第2回 九州男児の父の自信も回復? “認知症の解像度”が高い福岡市が推進するコミュニケーション・ケア技法と「オレンジ人材バンク」とは
マイナビニュース / 2025年1月27日 9時5分
――両親を連れて初めてこちらに伺った時、党さんが父に「我々は認知症の先輩から学びたいんです」と話してくれた言葉が印象的でした。
実際、2050年あたりには日本の人口は1億人を切って、その中で認知機能が低下した人は1200万人ぐらいなると言われているんです。そうなると、今の社会基盤は継続できないですよね。年を取れば多くの人が認知症になる。いずれ僕たちもたどる道なんです。その割合が多くなった社会に向けてどういう心備えをしていけばいいのか、日常生活の中でどういう工夫を重ねれば失敗が減るのかを先輩から学べば、そんなに大きな不安には至らない。そのためにも私たちは認知症の方から学ぶことが必要だと思います。
――「認知症になりたくない」と予防をする話はよく聞きますが、認知症になった将来を受け止めて備えるという話はあまり聞かない気がします。私もそうでしたが、認知症への偏見と恐怖がいろんなことを妨げていますよね。
そうなんです。あまりにも世間に悪いイメージがはびこっているものだから、初期症状があったとしても「自分は違う」と思いたいし、「知られたくない」「周りに迷惑かけたくない」と抗ってしまう。そこにもう無理が生じていて、多くの人を苦しめているのではないかと思います。当事者もそうだし、家族も「うちの親に限って」と受け入れられずに、なんとか戻ってきてほしいと咎めたりするわけですよ。そこに悪意はないのに、家族も辛いし、言われる本人も辛い。
――老眼になったら老眼鏡をかけるように、受け入れると楽になることはありますよね。老眼を認めるのにも多少の時間は必要ですけど。
メガネで例えるならば、みんな一律に適当な眼鏡を与えればいいわけではない。それぞれの視力に合ったメガネがあるように、認知症も個人個人の状態に合わせてフィットする環境を整えていくことができれば、大きな失敗は減るのではと感じます。
○心の準備をしておくと、全然違う
――そのための施策を福岡市では市が引っ張ってくれているのが頼もしいなと思います。
福岡市では「ユマニチュード®」「認知症の人にもやさしいデザイン」「オレンジパートナーズとオレンジ人材バンク」などを推進し、社会のアップデートを加速させようとしています。そういう状況を知ることができていれば、心の準備体操ができると思うんです。多くの方が、自宅や地域でこれまで通りの暮らしが継続できることを望んでいます。そのために今まで培ってきた経験、ノウハウを地域社会にフィードバックし、認知症介護というものを可視化することができれば、認知症は怖いものじゃない、行動の原因を知れば関わり方に工夫ができるよって。それはセオリーとしてあるわけだから、それを多くの市民が身につけていけば、認知症になっても望む暮らしが継続できると考えています。
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