家族が認知症になりまして 第2回 九州男児の父の自信も回復? “認知症の解像度”が高い福岡市が推進するコミュニケーション・ケア技法と「オレンジ人材バンク」とは
マイナビニュース / 2025年1月27日 9時5分
――そこから認知症の方でも安心して使えるリンナイのガスコンロなどが生まれたんですね。
あれは認知症の方の声から生まれたんですよ。当事者は「台所に立ち続けたい」という。周りは「火が危ないからIHがいい」というけど、新しいことを覚えるのは苦手だからIHは使いづらい。それによって台所に立つ時間が奪われ、ヘルパーや配食のようなサービスを紹介されるけど「それは嫌」だという1人のエピソードがあったんです。それを聞いた西部ガスの担当者がリンナイの担当者に声をかけて共同開発したのが、あのガスコンロなんです。開発までには延べで100人近い当事者やご家族の協力を仰ぎました。
――当事者は仕事として引き受けるんですよね。
企業は最低賃金を下回らないように対価を支払っています。企業はそれだけの対価はあって、社会貢献的にやっているのではなく、「ビジネスとして価値がある」とおっしゃいます。参加する当事者は、本当に自分が役に立つのか不安を持つ方もいますが、今の自分の経験や工夫が世の中にフィードバックされていくことを実感すると自信を取り戻します。覚えていなくても、喜んでもらえたとか自分もうれしかったという感情記憶は残り続けるし、しかも対価がもらえることで希望に変わっていく。人材バンクは役割を手にすることがいかに大切なのかを市民に知ってもらうために“見える化”していく目的もあったりします。
――具体的にはどのような仕事になるんですか?
どういったものを求めているのかを聞くインタビューや、認知症の人がどこでエラーをするのかを知りましょうという実証もあります。例えば、料理をする場合に実際にスーパーに行ってもらい、目的の品にたどり着きにくいんだなとか、うしろか付いてモニタリングさせてもらうんです。調理場でエプロンつけて料理しようと思ったら空間認識が弱くなっていることで紐を結ぶことが難しいと。そこからワンタッチで着用できるエプロンが生まれたりするという感じで、まさに認知症の方から学んでいます。センターでイベントをやる時に受付係やカメラマンなどを、当事者の方から募集することもあります。
――今日も、とある企業の方が開発のためにセンターで作業されていました。そういう方たちの交流の場にもなっているのも素敵ですね。
ここは当事者の方から企業の方まで、日本各地だけでなく世界中からいろんな人がきますよ。
――普段からこちらで働いている方もいますよね。母はその方が生き生きと仕事をしているのを見て、認知症の人でも働けると感覚的に理解できたので、いてくださること自体がありがたいなと思いました。
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