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家族が認知症になりまして 第2回 九州男児の父の自信も回復? “認知症の解像度”が高い福岡市が推進するコミュニケーション・ケア技法と「オレンジ人材バンク」とは

マイナビニュース / 2025年1月27日 9時5分

――その話を聞いたうちの母が父の手を触りながら話そうとしたら手を振り払われてしまったのですが(笑)、年配の世代はスキンシップに慣れていないから難しいのかなとも思います。

介護が相手に受け入れてもらえない時は“届け方”の問題であることが多いです。“優しさ”を相手が理解できる形で行源するためには技術が必要で、触れ方が大事ですね。話し方もそうで、向き合って穏やかに、ゆっくりと話すことによって、それまでできなかったコミュニケーションが成り立つ場合があります。ストレスや不安感が症状を悪化させる要因になることがあって、反対に安心感は認知症の進行抑制に効くことがあるんですよ。いかに優しさを届け、安心を享受できるかということに力点を置くと、関わり方の質が変わってくる。そういうことが広がれば、お互いに良好な状態で過ごすことができるんじゃないかと思いますね。

――福岡市では具体的にどのように広げているんですか?

福岡市は家族介護者や専門職向けの実践講座を行うとともに、福岡市が独自に養成した講師による地域の方や児童生徒向けの講座の普及を推進しています。今年度は福岡市内のすべての小学校で、4年生に向けての講座を実施しました。今の小学生の子たちも認知症という言葉は知っている。自分のおじいちゃん、おばあちゃんや近所にそういう方がいらっしゃった時に、どう関わったらいいかを知識として身につけることができるので戸惑わなくなりますよね。講座受講後の子供たちのアンケートを見ると、「認知症の人だけじゃなくて、友達同士でもこれは大事だと思います」と書いていたりするんです。本当にそうだと思います。

○■認知症の人が社会に参加し、認知症の人が求める製品が生まれる

センターの取り組みの中で一番興味を惹かれたのは「オレンジ人材バンク」でした。認知症でも仕事ができる。それは当時、自信をなくして小さくなっていた父の自信回復につながると思ったからです。実際、父は仕事の話を聞くとはりきり、その日に備えて家で掃除などを積極的にやるようになりました。九州男児で、これまで何十年も家の掃除なんてやったことがなかったのに。社会に役割があることは活力になる。そしてここでの取り組みは、それだけに留まりません。

――「福岡オレンジパートナーズ」と「オレンジ人材バンク」について改めて教えてください。

福岡オレンジパートナーズは、認知症の人とその家族、企業・団体、医療・介護・福祉事業者、行政で構成し、認知症について自主的に「知る」「考える」「つながる」「行動する」ための協議体です。福岡市は企業の方々に認知症の方が求めるサービスをどんどん開発してほしい。企業としても、少子高齢社会の中でビジネスを考えた時に、そこにマーケットがあるわけですよ。でも認知症の方のニーズがわからない。だったら当事者の方々から学んで、求める製品やサービスを開発したらどうですかというものです。福岡市では年に6回ほど、企業や当事者が参加するミーティングを行っています。

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