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中国風ゲンコツのおさめ方 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月12日 16時45分

 国慶節に合わせて「幸福」、そして「愛国」なんて、こっ恥ずかしくなってしまうような言葉ばかり選ぶのは、逆に言えばこんな歯が浮くような、現実感がありそうでなさそうな言葉こそが、国慶節という建国記念日の華々しい日にテレビで語られるにふさわしいからかもしれない。ここでもし、「あなたは家を買いましたか?」「車は何に乗ってますか?」「海外旅行したいと思いますか?」などという質問を街頭の人に向けようものなら、出てくる答はあまりにも現実的な訴えが続出し、国慶節の「お祝いムード」は吹き飛んでしまうだろう。

 まぁ、そんなふうに頭のなかでいろいろ思いながらネットの動画サイトでこの「愛国って何?」インタビュー集(中国語のみ)を観てみたのだが、意外におもしろかった。

 もちろん、「自分たちは侵略され続けた。今は強くなった」と感情がたかぶって泣く女性、「国は娘や息子より大事。わたしは孤児院で育てられたんだもの」と笑う高齢の女性、「日本車を買う余裕はある。だが国産車を買った。それが愛国」と言う若い男性、そして「愛国といえば柳条溝事件。尖閣は中国のものだ」と答える初老の男性...まぁ、この辺は「お約束事」の範囲である。

 でも、新鮮なのは「愛国って?」とマイクをつきつけられて、困った顔をしたり、恥ずかしげに顔を反らしたりした人たちの姿が映っていることだった。約2000人にインタビューしたそうだが、前述の任さんがつぶやいたようにその全員の回答が流れたわけではない。その中から「選ばれて」この人たちが放映されたのはなぜなのか。

 たとえば、アメリカに移民して中華料理屋を営む夫婦。「祖国が豊かで強くなってほしい。皆が幸せになってほしい」というが、わざわざ祖国を離れて15年間も暮らす人に「愛国」を尋ねているのはなぜか。実は彼らは「愛国」ではなく、「国慶節の時にあなたは何を思いますか?」という質問に答えているだけなのだ。つまり中国にルーツを持って海外で(もしかしたら国籍まで取った上で)暮らす人間からお祝いの言葉を聞き出し、うまくそれを「愛国」にすり替えている。

 イギリス暮らしの上海出身のおじいちゃんも「釣魚島? 釣魚島は中国のものだ!」と勢いよく語る。でも、マイクを突きつけた人物が何をどう尋ねたかはきれいにカットされている。

「わたしは国を愛してるわよ!」と答えた女性は、「公開の場で他の人に愛国だと主張しますか?」と尋ねられて、「そんな歯の浮くようなこと、言うわけないじゃない。恋愛だっていちいち『愛してるわ』なんて言わないでしょ」と切り返した。

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