1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際

中国風ゲンコツのおさめ方 - ふるまい よしこ 中国 風見鶏便り

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月12日 16時45分

 そして、同じ質問をぶつけられた山東省の漁民の答はこうだった。「公開の場で言わなくても愛国は愛国だろ。なんでいちいち公開宣言する必要があるんだ。ぼくはアメリカに生まれたわけじゃない、中国で生まれたんだから中国人。中国人だから中国を愛する、経済を良くするために頑張ればそれでいい。主席がきちんとぼくらを導いてくれて、社会を良くして、団結するだけさ」

 だが、「愛国って何?」がすんなりいかなかった場合にはインタビューは手段を切り替えている。「愛国って言葉に何を思いますか?」と聞かれた若い男性は、「以前は愛国って言うと、釣魚島(尖閣諸島)だの、日本車破壊だの、理性を失って日本製品ボイコットなんて言ってたけど、ぼくにとっての愛国ってもっと理性的に自分を高めること、それが国に対する最大の愛なんじゃないの?」と答えている。

 ある中年の男性は「ぼくのような一般庶民はきちんと自分の仕事をこなすことで、無言で国に貢献しているんだと思う。どんな業種のどんな仕事でも。今は経済が発展して、人々の考えはさらに開放的、積極的になった。でも、どんな仕事をしていても、心は国にある、(愛国って)そういうことじゃなかな」と落ち着いた表情で語った。

 旅行中の青年は「ほとんどの若い人はそんな話題には興味持ってないよ」と答え、「なぜ?」と食い下がられて、「だって今の世の中は功利主義だらけ。愛国なんてそれほど重要なことじゃない」と語り、「今はみんなの気持ちが変わっている最中で、帰属感を失っている。自分の行動を規範するルールもない。それを良いことだと思わないけれど、それが現実。国慶節だってぼくらにはただの連休7日間っていう意味しかないね」とクールだった。

 面白かったのは、自転車に乗っていたところを呼び止められたらしいある大学生だ。「愛国ってなに?」と尋ねられてまず困った顔をし、「それはぼくに訊く問題じゃないな」。「じゃあ愛国っていうとどんな人、どんな言葉を思う?」と再度訊かれると、目をぎょろりとさせて「何にも思い浮かばない」と答え、最後に「愛国者って言えば?」という質問に「ミサイル」とだけ答えて去っていった。「愛国者」、つまりパトリオット。アメリカのミサイルである。

 インタビュー特集のバージョンはいくつかあるらしいが、そのうちの一つの「愛国特集」はかなりはっきりと、「エコ・ネットデマ批判・礼儀やマナー→918(満州事件の発端、柳条湖事件)→釣魚島→日本製品ボイコット→非理性的なボイコットや暴力行為への批判→強く大きく豊かになった我が国」という流れで構成されていた。最初の「エコ、ネットデマ批判、礼儀やマナー」は今中国政府が国民に向けて行っているキャンペーンそのものだ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください