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東エルサレムの緊張 - 酒井啓子 中東徒然日記

ニューズウィーク日本版 / 2014年11月22日 19時48分

 このように見れば、イスラエルが東エルサレムでイスラーム教徒、つまりパレスチナ人への圧力を強める背景には、東エルサレムを名実ともに「ユダヤ人」のものとしよう、という意思があることがわかる。イスラエルに併合された東エルサレムのパレスチナ人には、「居住権」が与えられているが、これはいつでもイスラエル内務省によって取り上げられることができるものだ。では西岸・ガザのパレスチナ人と同じような立場に置かれているのかというと、それも違う。イスラエル「国内」の扱いになってしまった東エルサレムから西岸・ガザに行くにはイスラエルの厳しい検問を通り抜けなければならず、同じパレスチナ人でありながら、分断されている。

 そのジレンマに立たされた東エルサレムのパレスチナ人のフラストレーションをよく表した映画が、エリア・スレイマン監督の「D.I.」だ。自身がイスラエルのナザレ出身のパレスチナ人であるスレイマン監督が描くパレスチナ人の世界は、もやもやとした憤懣と鬱屈と閉塞感に満ちている。イスラエルが建国した1948年にそのままイスラエルに取り込まれてしまったナザレの、イスラエル国籍を持つ(持たされた?)パレスチナ人。1967年戦争の際にイスラエルに併合されてしまった東エルサレムの「居住権」しかないパレスチナ人。イスラエルの占領を受けて破壊と侵略に晒されてきた西岸、ガザの、権利を剥奪されてきたパレスチナ人。それぞれが別々のフラストレーションを抱え、彼らの間の連帯感と不信感もまた複雑に絡む。(映画D.I.の解説本「映画『D.I.』でわかるおかしなパレスチナ事情」(愛育社)は、こうしたパレスチナ人社会をよく説明している。)

 ガザでパレスチナ社会を破壊したイスラエルは、次に東エルサレムに刃を向けるのだろうか。自分たちの望む社会を作るために、そこにもともと住んでいた異なる人々を、殺すか追放するか従属を強要するかしか認めない、というやり方は、どこかの「イスラーム国」がやっていることだ。イスラエルのこうした排除政策がやまない限り、「イスラーム国」の行動を批判することは、できないのではないか。

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