1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

タランティーノ最新作『ヘイトフル・エイト』、美術監督・種田陽平に聞く

ニューズウィーク日本版 / 2016年2月26日 18時40分

 でも今回は、本人の態度もそうだけど、周りの扱いも巨匠監督になっていてびっくりした。そこが変わったな、と思うところです。日本では、タランティーノというとコミカルなイメージがあるかもしれない。でもあれは本人のサービス精神のなせるわざで、本当はそういう人じゃない。



種田による「ミニーの紳士服飾店」のデザイン画(上)と、それを基に作られたセット(下) (C)Copyright MMXV Visiona Romantica, Inc. All rights reserved.

 オーソン・ウェルズみたいな巨匠になってきた、という印象で、僕はそれがとても嬉しかった。僕は巨匠監督という存在が好きなんです。いつの時代も新人監督はたくさん出てくるけど、彼らが全員、巨匠になることってないですよね。中堅まで行くことができても、巨匠になる人はそうそういないというのが今の映画界の実情だと思う。監督の資質というよりも、映画作りの環境が変わってしまったから。昔はハリウッドにもフランスにも、日本にだって黒澤(明)、溝口(健二)、小津(安二郎)とか巨匠監督がごろごろいました。

 クエンティンが以前と変わらないのは、ご機嫌になると大笑いするところかな。げらげら笑いながら撮影している。大しておかしくなくて、誰も笑っていないんだけど(笑)、本人は「いやー、面白かった。だから、もっと面白いのをもう一回」って言いながら、延々と撮っている。そんなところは同じだった。

――テイクが多いようだが、現場としては過酷なのか。

 クエンティンは役者のすぐそばでげらげら笑いながら、「もう一回、もう一回」みたいな感じでやっている。だから役者もピリピリしない。現場は過酷という雰囲気にはならない。

 OKテイクが出ると、彼が「今のは『ジェシカ』だな!」って。ジェシカは「OK」のことで、なぜそう言うのかは忘れたけど(笑)。「じゃあ、OKだ。OKだからもう一回撮影しよう。なぜなら......」ってクエンティンが言うと、スタッフがみんなで、「Because we love making movies!(だって僕たちは映画を作るのが大好きだから!)」って叫ぶ。

 映画作りが好きだから、撮影が好きだから何度も撮っているんだよね、と。傍から見るとクレイジーかもしれないけど、その場にいると本当に明るい雰囲気です。

――今回の作品で、タランティーノからはどんな注文が?

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください